トモダチ作戦に見る2つの能力
現在、沖縄を中心とするアメリカ海兵隊部隊による「Operation Tomodachi(トモダチ作戦)」というものが展開されています。
HA/DR(人道支援・災害救援)作戦の一つであるこれは、今回の東日本大震災に対する米軍の支援であり、日本政府が命名したものです。
「Tomodachi」とは、言うまでもなく「友達」に由来します。
アメリカ海兵隊を特徴づけている「能力」は、大きく2つあります。
① 水陸両用戦能力
② 緊急対応能力
「水陸両用戦能力」とは、陸上部隊が作戦目的地周辺の洋上の艦艇から、海と空を経由して陸に侵攻し、作戦活動を実施する能力を意味します。
この能力は、もちろん、もともとは軍事目的で開発されたものですが、海洋からアクセス可能な地域での、大規模自然災害の救援に転用することが可能です。
つまり、周囲を海で囲まれた日本での災害救援には極めて有用な軍事力ということになります。
具体的には、海兵隊の母艦となる揚陸艦には各種ヘリコプターを多数搭載することができ、被災地に対して空からのアクセスが可能です。
また揚陸艦には、海から被災地にアクセスするための各種揚陸艇や水陸両用戦闘車両も搭載されています。
この水陸両用戦闘車両には、あらゆる地形を踏破する能力が備わっており、海から上陸して、そのまま内陸に踏み込むこともできます。
津波によって瓦礫の平原と化した地域には、極めて有用な能力だと言えます。
ところが、いくら水陸両用戦能力が高いと言っても、有事の際に緊急対応ができなければ、作戦遂行の鍵を握る初期対応に手間取ってしまいます。
そこで、装備以上に決定的に重要な要件は、意思決定のスピードなのです。
これが②の「緊急対応能力」です。
アメリカ海兵隊では、作戦行動の「意思決定サイクル」のスピードこそが作戦を勝利に導くという軍事理論を立て、それに沿った組織を構築し、訓練を施しているのです。
ところで、米国も日本もシビリアンコントロール(文民統制)の体制です。
ということは、この体制において最も重要な意思決定サイクルは、軍隊の側にではなく、それをコントロールする側、つまり政治の部分にあるということになります。
日本で言えば、首相や防衛大臣の意思決定が最も重要だと言うことです。
ところが、今回の大震災に対する動きを見ていると、上に挙げた2つの能力が、今の日本にはともにないということがはっきりとしたように思われます。
自衛隊は、残念ながら、米国海兵隊のような「水陸両用戦能力」は持ち合わせていません。
しかしそれ以上に深刻なのは、今やこの国のトップが「適性な軍事的判断能力」を持ち合わせていないのではないかという懸念です。
今回のような災害でさえ、トップの緊急対応能力の欠如によって、失われる必要のなかった無辜の命が失われた可能性も否定できません。
まして、軍事的有事の際にこのような状態では、私たちの命は一体どうなるのか。
米軍の人道的・友好的な支援を「Tomodachi」と命名するのはいいのですが、私たちの周辺には「tomodachi」だけが存在するのではないというのが、厳しい現実でしょう。
(「4月初日、日臨節、下関」)
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