聞き上手は評論家に勝る

「私は本当に人の話を聞くのが好きです。誰であろうと自分の話をし始めると、時のたつのも忘れて聞くようになります。10時間、20時間と拒まずに聞きます。話そうとする人の心は緊迫していて、自分を救ってくれる太い綱を探し求めるのです。
そうであるならば、私たちは真心を込めて聞かなければなりません。 嘘偽りなく心を尽くして人の話を聞いてあげるように、私自身の真実の心の内も真摯に話してあげました。そして、涙を流してお祈りしました」
しかし一旦聞く側に回られると、これも徹底して聞かれる方です。
10時間、20時間も聞けば、話し手はもう話すこともなくなります。
そうすれば、今度は反対に、文先生の言うことは何でも聞くようになるというわけです。
対話というのは、当然「話す側」と「聞く側」とが相(あい)対して成り立ちます。
ところでたいていの人は、聞くよりも話すほうを好むようです。
自分の思いを話したい人は多いのに、それを聞いてくれる人は少ない。
それで、人の話を親身に聞いてくれる人がいれば、とても有難がられるということになるのです。
しかし、人の話を聞くというのも、ただ聞けばいいというわけでもないので、簡単ではありません。
プロのカウンセラー、東山紘久氏が『聞く技術』の中で、日常的な会話の中でも有効な聞く技術について教えてくれています。
参考になりそうなポイントをいくつか紹介します。
相づち以外はしゃべらない。意見を聞かれたら、1行以内で答える。
② 相づち一つで、会話を深めることも日常会話に留めることもできる。
聞き出そうとすると、話し手は警戒し始め、本音が出なくなる。
③ 子育て、部下育てには、聞き手モードが効果的。
最良の心のケアは、ひたすら聞いてあげること。
④ 聞き手は話し手より偉くはないと自覚すべし。
じっくり話を聞き、人格と乖離した助言を避け、話し手が自分で人生の知恵を見出すように助ける。
⑤ 共感的に聞く。
共感とは、相手の気持ちで話を聞くこと。自分の気持ちで聞くと、話し手とズレが生じる。
⑥ オープンであること。
嘘をつかない。飾らない。
⑦ 評論家にならない。
評論家とは、相手の話を聞かず、あるいは否定的に聞き、自分の話だけをする。それがたとえ正論であっても、相手を否定することに変わりはない。
⑧ ask ではなく、listen する。
ask は質問者の意図に沿うことであり、listen は話し手の意図に沿うこと。ask 過多になると、質問者の望む情報ばかりを集めることになり、話し手の本音がつかめないことがある。
この本を読んでみて、私は、
「上手に聞くこと」
のパワーを認識しました。
うまく聞くことは、下手に意見するよりも、よほど相手に対する大きな影響を与えることができる、と思いました。
さっそく娘との対話にこのアドバイスを生かしてみると、これはかなり大きな効果があることが分かりました。
女の子というのは、とにかく今日あった出来事を事細かく話してくるものです。
その時、私はひたすら聞き手に徹し、タイミングを考えながら相づちを打ち、下手な意見やアドバイスを差し挟まないようにします。
ほとんど、ただ聞くだけです。
しかし、これが娘にとってはものすごくいいようです。
「お父さんは私の話を決して否定したり、評価したりせずに聞いてくれる、良い聞き手だ」
ということが分かってくると、娘はそれまでよりもよほど頻繁に私を聞き手として求めてくるようになりました。
友達関係などの悩みに私の視点からアドバイスらしきものをしても、どうせ娘にとって大した役には立ちません。
娘の抱える問題は、本人が考えながら、気がつきながら解決していくものだと思います。
私たちはさまざまな相手との会話で、いつの間にか評論家になっていることがどれほど多いでしょうか。
意識的に、話すことを3、聞くことを7くらいにするように心がけてみたら良いように思います。
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