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「人の為」にしない

kitasendo
2024-02-24

いさゝかデジタルに疎い知り合ひが
「中古でもいゝから、そこそこの性能で、あまり値の張らないパソコンがほしい」
と言ふので、私がネットで探してみようと請け負つた。

アマゾンなどで探して、これなら要望に適ひさうだといふ一品を見つけ、本人の承諾を得て購入。数日で届いたので、基本的な初期設定をして、本人に手渡した。

これでそこそこネットも楽しめるだらう、よかつたよかったと思つてゐると、彼から電話が入つて、どうもうまくいかないところがあると言ふ。中古なりの問題が潜んでゐるのかもしれない。

電話であれこれ話しながら、修復を試みるが、なかなかうまくいかない。電話では難しいから、また改めて会つて診てみようといふことで電話を切る。

切つたあとで、何だか心がわだかまる。

「せつかく相手の為にやつてあげ、安くていゝ買ひ物もさせてあげられたと思つたのに、使ひ勝手が悪ければ、却つて迷惑をかけたことになるかもしれない。彼も変なものを買はされたと恨むのではないか」

そんなことで恨んだり怒るやうな人でないことは分かつてゐるのに、私が自分の中で物語を作り、その自作の物語によつて自分が心を悩ませる羽目になつてしまつたのです。で、そのとき、ハッと思ふことがあつた。

「あなたは『人の為に』やつてあげようと考へたから、そんな悩みが生まれる。何でも『人の為』にやつたらだめだ。どんなことも『自分の為』にすべきなのだ」

さういふ思ひが、どこか胸のあたりから伝はつてくるのです。

ものごとは「人の為」にせず、「自分の為」にせよといふのです。これはおかしいやうな気がする。道徳基準にも宗教の教へにも悖るのではないだらうか。

しかし、意味ありげに響いてきたこの言葉。一抹の真実は含まれてゐるかもしれないので、理由を考へてみませう。

■ 「人の為」の何が問題か

「人の為」といふのはとても美しくて良ささうなのですが、その相手を主体にします。その人が喜ぶことは何だらうかと考へて、喜んでくれさうなことをしてあげようと考へる。

この、一見悪くないやうなことの中に、意外な陥穽があるかもしれないのです。

「それは、本当に自分がやりたいのか」
といふことです。

今回のパソコン調達くらゐなら、さほど大したことではありません。せいぜい数時間、手間を取られるくらゐのものです。

それでも、その数時間を犠牲にして、その「人の為」にするといふことでせう。それがうまくいつて、相手も喜んでくれゝば、その犠牲も気にならないかもしれない。しかし、予想に反して相手があまり喜んでくれなかつた場合は、どうでせう。

「せつかく、そこまでやつてあげたのに、良い結果にならなかつたのか(あるいは、なぜその努力に応じた感謝がないのか)…」
といふ思ひにならないとも限らない。

これは明らかに、「人の為」にはしたかもしれないが、「自分の為」にしてゐないからでせう。「人の為」だけにすると、その結果が良くない場合、自分は決して喜べない。なぜなら、それをすることが「自分の為」にもなるといふ動機がない(薄い)からです。

もし「自分の為」にしてゐたら、結果が良くても悪くても、自分の問題になります。結果が良ければ、それを喜べばいゝし、悪くても、それは自分の問題です。いづれにせよ、自分が動機となつてゐるので、相手を責めることもないし、相手に振り回されることもない。

しかし実を言ふと、「自分の為」にする最も重要なポイントは、結果ではありません。「自分の為」の価値はプロセスにあるのです。

つまり、「それをしてあげること自体がうれしい」。その「うれしさ」を味はふことが第一で、それが「人の為」になるかどうかは結果です。もちろん、その結果が「人の為」にもなり、人も喜んでくれゝば、自分の喜びも倍増するのは言ふまでもない。

「自分の為」の特徴は、

① 頭で(理屈で)考へない。

「これをしてあげたら、かういふ結果が期待できさう」
というやうな計算がない。

② 今に集中する。

頭で考へないから、将来の結果に拘泥しない。今それをすることが自分の喜びかどうかが、大きな要因になる。

そして、「人の為」といふのは、これと真逆だと気づきます。「人の為」は頭で考へる。そして将来の結果に焦点を合はせる。むしろ、今を否定する。

今日、改めて会つてみると、私の物語はまつたくフィクションだつたと分かりました。彼は少しも気を悪くしてゐない。パソコンがうまくいかなかつたのは、どうやら私のレッスンの為だつたらしい。

結局、「自分の為」のない「人の為」では「本当の為」にならない。それが胸に響いてきたことの真意ではないかといふ気がします。

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