ハグ、いゝですよ
「あの、」と話しかけられました。 「もし、いやでなかったら、ほんとにいやだったらいいのですけど、よかったらハグさせてもらってもいいですか?」 驚いてすぐ返事できなかったので、 「あ、ほんとにいやだったらいいんです。他意はないんです」 とすごく申し訳なさそうに言うので、思わず、 「ハグいいですよ」 と言っちゃいました。 ふわっととてもやさしく包み込むようにハグしてくれました。 そのとき、こんなハグってあるんだ? と。男と女の愛情がらみのハグではなく、人間愛にあふれた気持ちが私の体を満たしていくのがわかりました。 (『みんな磨けば輝く原石』御厨雫) |
今朝目が覚めて、まだ布団の中でうとうとしてゐるとき、先日読んだ冒頭の一節が、ふと思ひ出されました。
「このハグは一体なんだつたんだらう? こんなハグを、これまでに体験したことがあつただらうか?」
と思つたのです。
この本は、先日私の知り合ひが、
「私の妹が電子本を出したので、よかつたら読んでみてください」
と紹介してくれたものです。
読んでみると、面白い不思議体験が満載なのですが、その中でもこのハグ体験が、私には一番印象深い。
雫さんにハグの許可を求めたこの男性は、半年後に旦那さんとなる人です。彼は不思議なことが大好きな人で、キネシオロジーの習得者でもあつた。冒頭の場面は、その最初のセッションを受けるときのできごとです。
どうして今朝、目が覚めるやこの場面が思ひ浮かんだのか。
「無条件の愛を体験したことがあるかなあ?」
と思ひ、記憶をたどつてゐたのです。
たどつてみたのですが、どうもそんな鮮明な記憶がない。そのとき、ハグの場面が思ひ浮かんだ。
そして、
「あれは、無条件の愛の象徴だな」
といふ気がしたのです。
無条件の愛などといふものは、この世では容易に体験できない。そんなものがあるのかないのか、宗教的にはありえるかもしれないが、理想としてとどまる。たいていは条件付きの愛なのです。最も無私だと思はれる親の愛でさへ、まつたく無条件かと言へば、何とも言へない。
自分の好みに合ふから愛する。
愛を返してほしくて愛する。
自分が寂しいから愛する。
見返りを求めて愛する。
いろいろあるにせよ、愛する人の中になにか条件がある。さういふ愛で愛されると、愛されたほうは「その条件を満たしてあげなければ」と(無意識的にでも)思ふ。
条件を満たしてあげられなければ、その愛はそこでやむかもしれない。その不安があると、相手の愛の枠にはめられて、完全な自由がないのです。
どうしてたいていの愛には条件がついてしまふのだらう。ふつうに考へれば、愛するほうに問題があると思はれる。しかし、ほんとうの問題は愛されるほうにあるやうな気がするのです。
雫さんの場合、どうしてあのハグが実現したのか。ハグを要望した男性の能動的な態度の力か。それとも雫さんがその要望を受け入れたからか。
いくら愛したい願望を持つてゐる人がゐても、その愛を受け入れる人がゐなければ、その愛は実現しない。その意味で、ハグの最終的な決定権を持つてゐたのは雫さんに間違ひない。雫さんがハグを受け入れることで、男性を「ハグできる人」にしてあげたのです。
これを実例として考へると、私の人生にどのやうな愛が現れるかを左右するのは誰か。愛される側としての私自身が愛をどのやうに受け止めるかに(かなりの割合で)かかつてゐる。そのやうに思へます。
私たちは人生を生きていく上で、いろいろな失敗をする。人との諍ひを何度も経験する。人から欠点を指摘される。さういふことを繰り返しながら、自分の価値感が次第に下がり、自分を愛せなくなる。
「私は無条件の愛で愛される価値のある人間だ」
といふ自信がもてない。
「相手に何かをあげなければ愛してもらへない私だ」
と思ひ込む。
愛されるための何らかの行為があつて、その結果愛される。さう思ふことで、自分の中に自ら「条件つきの愛」を作り出してしまつてゐるのではなからうか。
つまり、かういふことです。私たちが容易に無条件の愛に出会へないのは、そのやうに愛してくれる人がゐないからではなく、さういふ愛に値しないと思ひ込んでゐる自分自身のせいではないか。
聖書はアダムとエバが戒めを破つて罪を犯したとき、神が二人をエデンの園から追放したと記録してゐます。しかし実のところは話が逆で、二人が神をエデンの園から追放したといふべきではないかと思ふ。
「我々は神の無条件の愛を受けるに値しない者だ」
と思ひ込むことによつて、神の無条件の愛を自ら遮断したのです。
だから、神がいくら無条件の愛を持つてゐても、その愛で二人を愛することができなくなつた。すると、変はるべきなのは、神ではない。私自身です。
「ハグしていゝですか?」
と願はれたら、無条件で
「ハグいゝですよ」
と受け入れられる私になれるか。

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