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母はやつぱり母だなあ

kitasendo
桜のつぼみ

「春一番」といふには強烈すぎるもの凄い風が吹きまくつたあと、風が通り過ぎたのを見届けて安心したかのやうに、近くの桜の木がいつせいに蕾をふくらませ始めた。今日は春の穏やかな陽も差し、気温も上がつてきたので、家の前の大きな木の枝を少し剪定しようと思ひついた。

剪定してゐると、近所の老婦人が杖をつきながら歩いてきて、話しかけてくる。

「私もだんだん腰が痛い、膝が痛い。立つてゐるのもつらいからしゃがむと、今度は立ち上がるのがつらい。90までもうあと4年、元気で頑張つてくれと息子は言ふけど、思ふやうにいかないね。それにしてもあなたはお母さんの面倒をほんとうによく看ているね」

近所の人にはときどき同じやうなことを言はれるものの、自分では特に「よく看てゐる」といふ思ひはないのです。

つい先日、こんなことをふと思つたことがある。

「自分がおばあちやんの面倒をみてゐると思つてゐるが、ほんとうは、おばあちやんが私に面倒をみさせてくれてゐるのではないか」

おばあちやんはほぼ目が見えない。認知症で、今食べたことさへ忘れてしまふ。動けないから筋肉は弱り、1日の大半をベッドに寝て過ごす。夜昼の区別もないから、夜中に目が覚めて「おしつこ、おしつこ」と呼び続けることもある。

さういふところを見れば手がかゝるやうに思へるけれど、週に3回ほぼ休まずデーサービスに行つてくれる。行くと言つても、もちろん苑が車椅子付きで送り迎へをしてくれるのです。

冬場は「寒い!」と言つて嫌がることもあつたが、それでも宥めすかして椅子に座らせ、行つてもらふ。行つたところで、目も見えない。耳も遠い。誰かと談笑するのでもなく、昼食を食べさせてもらひ、風呂に入れてもらひ、あとは家の生活同様、ぢつと一人で寝てゐるだけ。

何の楽しみもなからうと思ふ。それでも欠かさず苑には行つてくれる。それは何のためか。私を休ませてくれるためではないのか。

「あまり行きたくもない、行つても別に楽しいこともない。それでも行つて1日過ごしてくるのは、あなたを少しでも休ませてあげようと思ふからよ」

そんなふうな声が、ふと私の耳に響いてきたやうな気がしたのです。

さうすると、
「やつぱり、母は母だなあ。寝たきりのやうになつても子どものことを気遣つてくれるとは、ありがたいものだなあ」
といふ思ひが湧いてくる。

苑から戻つてきてベッドに寝かせると、たいていはすぐに眠る。「お前のために今日も苑に行つてきたよ」とは、もちろん言はない。

しかしそのただ寝てゐるだけのやうに見える姿にも、
「やつぱり、母は母だなあ」
と思ふのです。

(お世話をしてくださる苑の方には感謝しております。念のため)

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認知症2
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やま

頑張って下さいね。

霧が、石ころを動かすらしいので、日々大変な中頑張って下さいね。

2022年03月28日 (Mon) 01:13
-

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2022年03月28日 (Mon) 01:13
kitasendo
kitasendo

Re: 頑張って下さいね。

やまさん、励ましありがとうございます。
霧が石を動かすとは心強いですね。

2022年03月28日 (Mon) 14:09
🍀

お母様に対する、先生の優しさが伝わります🍀

私も、先生のように捉えていけるようになりたいです。心がホッコリいたしました🌸

2022年03月29日 (Tue) 07:10
kitasendo
Admin:kitasendo