失敗は成功に裏返る
前回の記事「未来が過去を変へる」の中で、
「量子の世界では時間の因果律が逆転する」
といふ実験結果を紹介しました。
その実験では、時間的にあとで観測したことによつて、それよりも前に起こつた現象に変化を及ぼしたとしか思へない。さういふ結果が出たのです。
ふつうには
「原因は過去にあり、それが時間的流れで結果として現象化する」
と考へる。
あるいは仏教でも
「前世の因が今世に果として現れる」
と教へる。
我々の通念では、時間は過去から未来に向けてのみ一方方向に流れるので、過去が未来に影響を及ぼすことはあつても、未来が過去に影響することはありえないと考へる。ところが、ミクロの量子世界ではこれが逆転するやうに見えるといふのです。
日常生活では我々の通念は妥当のやうに思へる。しかし我々の意識世界においては量子世界と同様、この因果律の時間的逆転はむしろ、ふつうに起こりえることではないか。さういふ体験を我々はしばしばしてゐるやうに思ふのです。具体的に考へてみませう。
昔ある人からかなりひどい扱ひを受け、とても悩み、傷つきもした。その体験からなかなか解放されなかつたけれど、救ひを求めてある素晴らしい師に出会ひ、人生が大きく転換した。さういふ体験をしたとします。
転換したあとになつてみると、
「あのとき、苦しんだお陰で思ひがけず人生が開けた。私を苦しめた人は悪い人ではなかつた。むしろ私の恩人だ」
といふ思ひになつた。
このやうなことがあれば、人生の光を見つけた今の変化が、苦しんだ過去を変へることになつた。さう言へないでせうか。
こゝで重要なことは、今の変化も、それに伴ふ過去の変化も、いづれも私の「意識」の中で起こつてゐるといふ点です。
逆に言へば、昔その人がどんな言葉を使ひ、どんな行為をしたかといふ客観的な事実は変はらない。といふか、そんな事実はとうの昔に消え去つてゐるのであり、それはただ私の記憶(意識)の中にあるに過ぎないのです。
さうすると、過去が変はつたといふのは、私の意識の中の記憶が変はつたといふことです。
こゝが少しややこしいのですが、過去が変はつたのはいつかと言へば、それは「今」です。私の意識が「今」、恨みから感謝に変はることによつて、過去の体験の記憶が「今」忌まわしいものからありがたいものへ変はつた。そのやうに言へば、意識の中には過去とか今とか未来とか、そんな時間の流れなどないといふふうにも考へられます。敢へて言へば、意識の中にはつねに「今」しかない。
過去や未来があると思ってゐるのは、実は私の意識でせう。実際に過去や未来などといふものがあるのかどうか、そんなことは分からない。時間の流れがあると思つてゐるのは私の意識なのですが、その意識の中には「今」しかない。何だか、とても不思議です。
いづれにせよ、意識の中には「今」しかないので、その中での処理次第で「過去」も自由に変へられる。
「今日の私のやり方は失敗だつたな」
と思つて、悔やむことがある。しかし私の意識の中で、そのやり方にプラスの意義を見つけ出すことができさへすれば、失敗はとたんに成功に裏返るのです。
意識の世界は量子力学に通じてゐる。我々の存在世界は大きな輪のやうになつてゐて、極と極が繋がつてゐる。さういふイメージが私の頭に描き出されます。

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