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練習、2日休むと、死ぬ

kitasendo
内村航平

「航ちゃん、練習を休みたいことはないの?」
「ない」
「練習を1日休むとどうなる?」
「体が腐る」
「2日休んだら?」
「死ぬ」

これは内村航平さんが中学生のときの、お母さんとのやり取りです。

内村さんと言へば、体操世界大会8連覇といふ前人未到の成績を残した日本体操界のレジェンドとも言つていゝ人。国民的英雄です。

ところがこの内村さん。両親が体操選手で、自身も幼いころから体操を始めたものの、その技量、戦績は大学に入るころまでさほどパッとしなかつた。それでも興味深いのが、冒頭のやり取りです。

中学生のころ、どの大会に出ても結果は芳しくない。こんな成績では本人も嫌気がささないかと、お母さんは気がかりだつたのでせう。「練習、休みたくなることないの?」と息子に聞いてみた。

すると、内村少年の答へはちよつと意外だつた。

練習は、1日休めば体が腐る。2日続けて休んだら、死ぬと言ふ。「腐る」とか「死ぬ」とか、いかにも中学生らしい、単刀直入な表現です。いづれにせよ、成績の如何にかかはらず、練習をちつとも嫌がつてはゐなかつた。

振り返つてみると、小学1年で初めて出場した大会でこんなことがあつた。

床運動でバック転ができず、最下位になつた。コーチを務めてゐた両親のもとに照れ隠しをしながら戻つてきた。すると、お父さんが「お前、なにやつてんだ」といふ感じで、内村少年のお尻をパチッと叩いた。

内村少年はショックを受けて、体育館の隅に行つて泣き出した。それを見て、お母さんは考へたのです。

「他の子の父母たちはリラックスしながら応援してゐる。ところが私たちはコーチの立場で、『うまくやれ』といふオーラをガチガチに出しながら凝視してゐた。一体誰のための大会なんだらう?」

このときの気づきがよかつたのでせうね。それ以来、父母コーチは息子への態度を変へたのです。

いくら父母がコーチであらうと、競技は父母のためではない。もちろん、子どもが出場すれば父母は期待するでせう。一所懸命応援もする。しかしその競技は、一義的には本人の競技なのです。

周囲が過度に期待すると、本人はそれを感じて余計に緊張する。練習ではできてゐたのに、本番で失敗する。内村少年のバック転の失敗は、まさにそれだつたのです。

競技者本人を主体とする応援は、本人に莫大な力を与へる。その力を受けて、内村少年はぐんぐんと実力を伸ばした。

事実、
「ぼくを一番応援してきてくれたのは、祖母と母だと思ふ」
と内村さんは語つてゐる。

結局父母の役割は、自分の子どもが「練習を嫌がらない」といふ環境を作つてやることだなと思ふ。この場合の「練習」はメタファーですね。子どもたちが自己の成長のために日々継続するあらゆる営為です。

そこで父母は応援はするけど、自分たちの期待を押しつけない。何かを教へてやると言つたところで、教へてやれるものなど大してありさうには思へない。

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