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温泉の髪の長い男性

kitasendo
長髪男性

先日、近くの温泉に行つた時のこと。

男湯の暖簾をくぐつてドアを開けたとたん、脱衣所の鏡の前に座つてゐる若い男性が目に入つた。その男性はドライヤーを両手に1つづつ持つて髪を乾かしてゐる。

どうしてドライヤーを2つも使つてゐるかと言ふと、髪が長いのです。背中の肩甲骨辺りまで届きさうに見える。

その男性が視野に入つた瞬間、
「どうして今どき、こんな長い髪なんだ」
といふ思ひが湧き、不衛生で嫌な感じがしたのです。

これは本当に瞬時の出来事です。なぜ長い髪が不衛生で嫌な感じがするのか、自分でも分からない。しかしさう思つた瞬間、私とその男性との間に意識的な距離が生じたのは確かです。

あの時、もしも私が
「長い髪、何て素敵なんだ」
と思つたとしたら、私は間違ひなくその男性に好感を抱いたはず。

「見事な長髪ですね」
などと、一言親しみのある言葉をかけることさへしたかも知れない。

服を脱ぎながら、
「これは一体、どういふことだらう?」
と自問がしきりに起きる。

そして
「私はつまり、私の世界の中に生きてゐるといふことだな」
といふ答へに行き着いたのです。

初見で瞬時に抱く印象のことを、ふつう「第一印象」と言ひます。そしてこの第一印象は結構間違つてゐないなどとも言はれる。

しかしこの第一印象は相手の姿それ自体ではなく、自分自身の内面の世界を映してゐるのではないか。「良い人か、悪い人か」「自分にとつて益のある人か、損になる人か」、それに対する評価結果が瞬時に出るのですが、それは十分な量の客観情報に基づいたものではない。

極めて僅かな情報だけで判断を下す。その判断は私の意識がするのではなく、無意識が働いてゐるやうに思へます。つまり、この判断は外部からの情報によらず、大半は無意識の中に貯蔵されてゐる情報に基づいて為されるのです。

そしてその無意識は、私の意識でコントロールすることができない。無意識が私の意識を支配してしまふ。だから「嫌だな」と無意識が判断をした後では、その人を意識的に好きになるのがとても難しいのです。

この無意識が「私の中の世界」です。無意識なので、私がその中で暮らしてゐることをふだんははつきりと自覚しない。しかし、今回の例のやうに、長髪の男性を見たとたんにその無意識がポッと浮かび上がつて姿を現すのです。

この長髪男性はほんの一例に過ぎません。我々はどんな人に対しても、大抵は同じやうに接してゐるのではないか。

初めての人なら
「かういふ人に違ひない」
といふイメージを無意識に作り上げ、知つてゐる人なら、
「これまでかういふ人だつたから、これからもさういふ人に違ひない」
と思ひ込むのです。

私の周りには善意の人が多いのか、悪意の人が多いのか。敵が多いのか味方が多いのか。未来は開けるのか、先細りするのか。それらは私の外で決まつてゐるのではなく、私の中の世界で左右される問題だと思はれるのです。

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