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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

畏みて詔り直す

2022/01/16
胸に響く言葉 5
アマテラス

『古事記』に天岩戸隠れの物語があります。

弟の須佐之男命があまりに暴虐を働くので、姉の天照大神が岩戸(洞窟)に隠れるといふ話です。なぜ岩戸の中に身を隠したのか。弟を怖れたのか。あるいは子どものやうにすねたのか。天下の最高神である方が、さすがにそんなことはないと思ふ。

スサノオは田の畔を壊したかと思ふと、今度は宮殿にウンコをまき散らす。極めつけは馬の皮をはいで機織りの小屋の屋根から放り込むと、機織りの女性が不運にも死んでしまふ。

このやうな狼藉を見てアマテラスは岩戸の隠れるのですが、そのときのことをかう描写してゐます。

ここに天照大御神 見畏( みかしこ )みて、 天( あめ )の岩屋戸(いはやと)を開きてさし篭(こも)りましき。

「畏(かしこ)みて」といふのは、「怖れて」とは違ふ。「かしこみかしこみ申す」と祝詞にあるやうに、「謹んで」といふやうなニュアンスです。

弟の振る舞ひはあまりにもひどいのに、なぜそれを「謹んで見る」のか。

アマテラスはお隠れになる前に、一度「詔(の)り直す」ことをしておられます。

田の畔(あ)を離ち、溝を埋むるは、地(ところ)を惜(あたら)しとこそ、我(あ)が汝弟(なせ)の命、かく為(し)つらめ」と詔(の)り直 (なほ)したまへども…

スサノオは田を壊したのではなく、新しく田を広げようとしたのだ。さういふふうに目の前の事態を「言ひ直された」のです。もちろんさう言ひ直したからと言つて、スサノオの行状はすぐに変はつたわけではない。

それでもこの「詔り直す」といふ行為は、アマテラスご自身の中ではとても重要な転換だつたのです。

それまでは、弟は手に負へない。父イザナギの御心に従ふべきなのに、弟はいつまでも亡き母に会ひたいなどと言ひ募つて父と姉を困らせてゐる。我が儘からこんな狼藉までするとは何事か。さう思つてゐたのです。

ところがふと、アマテラスの中に意識の転換が起こる。

「弟が聞きわけがないのでこんな乱暴をしてゐると思つてゐたが、もしかしてさうではないかも知れない。弟の乱暴は私の意識の反映ではないか?」

アマテラスの中に思ひがけない閃きが来るのです。

姉弟ともに、生まれたときにはイザナミは死んだ後なので会つたことがない。本心を見つめれば、アマテラス自身も一度母に会つてみたい。しかし父の意向に沿ふべきだと思ふ長女の責任感から、その本心を抑へてゐた。弟はその気持ちをありのまゝに現してゐただけだ。そのことに気づくのです。

すると改めるべきは弟の外的な行動ではない。アマテラス自身の内面の思ひであり、認識なのです。そこであの「詔り直し」が出てくる。

詔り直した後も弟の乱暴はやまないので岩戸に隠れるのですが、その時の心は怒りでも怖れでも批判でもなく、「謹んで」なのです。問題は自分自身にあると分かつてゐる。

岩戸は暗闇の世界です。何も見えないから、自分の内面に目を向けるしかない。

「自分の何が問題なのだらう。私の認識、私の態度をどう変へたらいゝのだらう」

そのやうにひたすら自分を見つめる。それが天岩戸隠れの秘密です。

「詔り直し」と「岩戸隠れ」。この二つは、折にふれ、我々にも必要なことではないかと思はれます。

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Comments 5

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甘えん坊くん

質問させてください。

話の結論としては、美しいもので、そこはいいのですが、

文中で、「それが天岩戸隠れの秘密です。」 と、断定してあったのですが、
その確信に至った根拠として、何かあったのかどうか、お聞きしたいのです。

参考資料か何か、あるのでしょうか?。
それとも、何か霊的な天啓でもあったのでしょうか?。

よろしく お願いします。 m(__)m

2022/01/16 (Sun) 17:23
kitasendo

kitasendo

Re: 質問させてください。

甘えん坊さん、コメントありがとうございます。
天啓といふほど大袈裟なものではありません。それにしては確かにやゝ断定的な感じが強いですね。
小名木善行さんの日本史談義をYoutubeでよく観ますが、そこでいろいろなインスピレーションを得ます。他には福田和宙さんのブログなども参考になります。
日本神話の中の神様はとても人間的なところがあるので、行動の背後にある心理を人間的に考へてみると、何だかとても身近な感じがしてきます。

2022/01/16 (Sun) 18:26

甘えん坊くん

誠実な対応、ありがとうございます。m(__)m

なるほど、それならば 話は早いですね。

私は ねずさんの独り言さんの動画に、2つほど 不満があるのです。
それが・・・

① 最近は、1時間モノが多いので、20分の動画時代に戻してほしい(笑)。

② 言葉上では、動画内で 記紀(古事記・日本書紀)の原典となった4つの古史古伝である、

・ 上記(うえつふみ)
・ ホツマツタヱ(12代:景行天皇に依る編纂命令?)
・ 宮下文書(富士王朝の伝承)
・ 竹内文書

これらの↑名前は出せども、内容に踏み込まないので、それだとまるで・・・
GHQが消してしまった「本当の日本の古代史」(縄文人が人類のルーツなので=世界史)で、封殺してしまっていた米国の悪魔達を、ねずさん程のお方なのに! 「言論左翼」的にアカデミズムだけを追い掛ける内容になっており、

そうなると・・・、→ 日本人の為にも、人類の為にもならないのです。

そこで、貴殿がもしも もっと詳しい実相を啓示等でご存じでいらっしゃるならば、これからもドンドン公開していただきたいのです。

よろしく、お願いします。m(__)m


※ 因みに、73代:竹内宿禰に依る、正統:竹内文書の奥義で行けば、
  ↓
日本のここ2000年間の国体の柱とは、イエスキリストで、
古事記で言うと、イエスキリスト=二二ギの尊のことらしく、
イエスキリストの4男さんが、初代天皇:神武天皇とされてて、

富士王朝の南北2王朝こそが、ヤコブの11男である、ヨセフの息子たちの、マナセとエフライムの2王朝らしく、

つまり、秦の始皇帝と 大臣の徐福が来日したのがアマテラスの弟のツクヨミの勢力の話なのですが、
これらの王朝が富士王朝で、その末裔のナガスネヒコが大阪の難波で神武に負けて、今までの神武皇統126代+αになったみたいなので、

そうなると、、、
文龍明氏は、大東亜戦争前後の時代に、イエスの末裔を暗殺しようとしていた事になり、
米国はじめ連合国側は、自分らの「聖書の信仰対象」の末裔を、大東亜戦争で310万人殺した事になります。

もちろん、モーゼが十戒を授かったのも、富山の皇祖皇大神宮に滞在時に、時の3460年前頃の日本の天皇から頂いたモノらしいです。

この73代竹内宿禰氏こそが、国防の柱で、天皇と毎日儀式をしていた人物であり、
幕僚長が統括する、日本国の国防会議に参加できる4名の内の一人で、
●幕僚長 ●総理大臣 ●八咫烏のTOP ●そしてこの73代目だったのです。

国の柱である人物が、永年の封印を解いて公開した秘伝が、上記の 「聖書=古事記」 の中味なのです。

で、、、

貴殿がもしも、何か他にもご存じでしたら、ドンドン教えてくださいまし。
お頼み申す。💛

2022/01/16 (Sun) 20:51

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2022/01/26 (Wed) 09:02

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2022/01/26 (Wed) 09:08