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美しいものは正しい

kitasendo
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今年3月に迫つてゐる韓国大統領選挙の候補者の一人が提案した政策が話題になつてゐるさうです。

「薄毛治療に公的医療保険を適用させよう」
といふのです。

報じられたところを見ると、現在韓国には薄毛で悩んでゐる人が1000万人近くゐる。その多くは治療費が高額なため、海外から薬を取り寄せたり、前立腺肥大症の治療薬で代用したりしてゐる。この人たちを公的医療保険で助けようといふことらしい。

私自身は韓国の事情に通じてゐないが、解説者の中には、これは韓国で広がる「ルッキズム(Lookism)」が深く関はつてゐるのではないかと見る向きもあるやうです。

ルッキズムは「外見至上主義」とも訳されます。男性であれば高身長、女性であればスリムな体形。その他、脱毛してゐること、肌荒れがないこと、二重瞼であることなどが好まれ、社会的に高評価を受ける。

だから若者が就職活動する際には、見た目をよくするために美容整形を行ふ。親が子どもにさうすることを勧める場合も少なくないと言はれます。

人口が5000万人強の韓国で1000万人は相当な数です。その人たちの票が取れれば、候補者としては極めて心強い。人気取りと批判されやうが、魅力的な一手には違ひないやうに見えます。

このルッキズムに関して、評論家の岡田斗司夫氏が
「今の世の中はホワイト革命が進行中だ」
と論じてゐます。



ホワイト革命のキーワードは
見た目は正しい。美しいものは正しい
といふことです。これはまさにルッキズムの根底にあるものでせう。

岡田氏の分析によれば、4,50年前までは
「美しくないものの中にこそ真実がある」
といふ価値観もあつた。

例へば、人に嫌はれても厳しいことを言ふおじさん。あるいは、何日も着替へずヨレヨレになつたジーンズを履いてゐるドラマの若者主人公。さういふ人に一目置くといふか、一定の価値を認める感覚があつた。

ところが今や、口の悪いおじさんの居場所はなく、ドラマに登場する主役はもとより悪役でさへみんなイケメンや美女になつた。

別の例もあります。60年代70年代のアイドルと言へば、それはむしろ悪口だつた。

「アイドルといふのは見た目がいゝだけの子。歌はうまくないけどかわいい子が一生懸命歌つてゐる」

それが「アイドル」だつたのです。この感覚、私の世代ならよく分かる。

ところが昨今のアイドルは、まづ見た目がいゝ人が選抜される。その上で才能を伸ばしてテレビに出る。だから今のテレビには歌もうまくて見た目もいゝ人しか出なくなつてゐる。

かういふホワイト革命は、今回のコロナ禍によつてさらに進みつゝあると、岡田氏は見ます。

自分の中にウイルスといふ汚いもの(本当はどうか分からないが)を極力入れないやうにする。マスクをする。手洗ひ、消毒をする。むやみに人に近づかない。

さういふ人々の意識や行動パターンは、仮令コロナ禍が一旦収束しても元には戻らないだらうと岡田氏は言ふのです。

しかもこの世の中のホワイト化は、物質的なものだけに限らない。人の言葉や態度のやうな目に見えないものでも、汚いと思ふものはシャットアウトするのです。

例へば、SNSなどで、仮令自分の友だちであつても、人の悪口や批判をする人の発信は、密かに「ミュート」にする。さういふ言動をまるでウイルスのやうに感じるわけでせう。

ウイルスを100%排除することはできない。同様、悪口雑言も日常生活で100%シャットアウトすることはできないでせう。それでもできるだけ除菌を心がけるやうに、悪口雑言をミュートにするといふ趨勢は悪くないと思ふ。

美しくないものが自分の中に入り込むと、自分が汚れるやうな気がする。だからできるだけ自分を美しく保つために、美しくないと感じるものをシャットアウトする。これは良いことだと思ふ。

ただ、美しくないものは外から来るだけではない。自分自身の中にもあるのです。これをどうやつてミュートにするか。外来のものよりも対処がよほど難しいでせう。


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