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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

無敗の前科者代議士

2021/10/23
世の中を看る 0
中村喜四郎

今、衆議院の選挙期間中、『無敗の男』(常井健一)を読んでゐます。副題に「中村喜四郎 全告白」とある。

これまで中村喜四郎の名前を特に意識したことはない。偶々あるところで「これまでの選挙14戦14勝、選挙の鬼」といふやうな文句を目にして興味を持つたのです。

選挙に連戦連勝といふ議員は他にもゐやうが、中村の場合は、途中にゼネコン汚職の嫌疑で1年半の実刑判決を受け、それでも選挙に負けなかつた。ふつうでは考へられない。「選挙の鬼」の呼称も決して誇張ではないのです。

前科者がどうして選挙に勝てるのか。この点が私の興味を引きました。

中村には、政治家として独自の信念がある。
  • 名望家を味方につけない。
  • 企業や団体の組織力に便乗しない。
  • パーティーを開いて政治資金を集めない。
  • 人が集まる場所で辻立ちしない。
  • SNSやブログで発信しない。
  • 国会での質問や部会での発言を増やさない。
  • 新聞やテレビへの露出度を高めない。
これらの信念がすべて否定形なのは、通常の政治家が考へる「選挙必勝法」の裏を行くといふことです。中村は通常の必勝法を信じない。

中村の選挙活動はただ2つ。地域回りと活動報告だけです。これを徹底してやるのが無敗の秘訣だといふ。

月に2回は土日にミニバンで選挙区を街宣して回る。計4日間で茨木7区の全市町を隈なく回り切る。朝から夕方まで10時間以上、中村本人がマイクを握つてひたすら演説を続ける。

ところがそれほどに街宣しても、地域住民の反応はほとんどない。しかし無反応であることに、中村は不安を感じないといふ。

反応がないやうに見えて、中村の声はちやんと届いてゐる。これは毎月2回計4日欠かさず地域を回り続けてゐる人の直観であり感性なのです。

かういふ人には、自民党に風が吹かうと立憲に風が吹かうと関係ない。風の力で当選しようといふ考へは、中村には端からないのです。

だから、彼のミニバンに
党より人
と大書してあるのも、伊達ではないのです。

10期目の選挙戦からは「前科者」です。ふつうだつたら、「誰が前科者を国会議員に推すものか」と思ふところでせう。

だから中村は
「刑務所まで行つたんだから、言葉で訴へてもダメだ。態度で攻めるしかない」
と言ふ。

態度で攻めて攻めて、有権者が
「裁判所が中村さんを有罪にしたのはおかしい。検察がデタラメぢやないか」
と思ふところまで攻めていかうとするのです。

今どきは、大抵の政治家がブログを立ち上げ、SNSで発信する。つい最近は、安倍元首相さへyoutubeに参入した。さういふ情勢の中で、中村はあまりに古色蒼然、時流に乗れない古いタイプの政治家にも見えます。

それにそもそも、政治家にとつて地元の信任を得て選挙に勝つだけが目的ではない。代議士になつて何をするかが問題だ。大体、国会でも部会でも発言を増やさないのでは、代議士になつた意味がないではないか。さうも思へます。

しかし
「言葉だけではダメだ。態度で攻める」
といふのは、考へさせられるのです。

選挙前になると、どの党にも言葉による公約が並ぶ。「我が党は他党とこゝが違ひます」と自説を主張する。

しかし
「その言葉を言ふその人は、本当に信用できるのか?」
といふことが気がかりになることが多いのです。

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