お経「雨ニモマケズ」
雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラツテヰル …… 『雨ニモマケズ』宮沢賢治 |
宮沢賢治が特に好きといふ訳ではなくても、上の「雨ニモマケズ」は日本人でほとんど知らない人はゐないでせう。もちろん全文を諳んじろと言はれると無理でも、最初の二行は諺に近いほど人口に膾炙してゐる。
今改めて読んでみると、これはほとんどお経だなと思ふ。
生活の指針が2つ示してあります。
一つは、
「一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ 」
といふ食事に関するもの。
「一日ニ玄米四合」とは、腹八分目といふことです。その玄米のほかは、「味噌汁と少しの野菜」。極めて質素、小食です。これで、雨にも風にも雪にも暑さにも負けない丈夫な体を維持できる。
私はこゝまでの小食ではないが、しばらく前から梅干し、味噌汁、沢庵が毎食のベースになつた。これらのほかに魚か肉のタンパク質を摂るが、体調が良くなつたのを感じます。
もう一つは、
「野原ノ松ノ林ノ陰ノ 小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ」
といふ住居に関するもの。
松の葉の先端からは、何かの強いエネルギーが出てゐるとも言はれる。そして萱ぶきの家は、日本によく適した建築です。夏は涼しく、冬は暖かい。
今風にアレンジする必要はあるが、
「松の林の萱ぶきの家」
は最も健康でゐられる場所を示唆してゐます。
生活指針のほかに、生き方の指針もあります。
「欲ハナク、決シテ怒ラズ、イツモ静カニ笑ツテヰル」
「自分ヲ勘定ニ入レズニ、ヨク見聞キシ分カリ、ソシテ忘レズ」
そしてもう一つ、行動の指針。
「東ニ病気ノコドモアレバ 行ツテ看病シテヤル」
「西ニツカレタ母アレバ 行ツテソノ稲ノ束ヲ負フ」
「南ニ死ニサウナ人アレバ 行ツテ怖ガラナクテモイヽト言フ」
「北ニ喧嘩ヤ訴訟ガアレバ ツマラナイカラヤメロト言フ」
東西南北ですから、どこへでも行く。頼まれもしないのに訪ねて行くのはお節介にも見える。
特に、死にさうな人がゐれば、
「大丈夫、大丈夫。あなたは死んでも魂は生き続けるから」
と教へてあげるといふのです。
ところがそんなふうに、一生懸命人の為に動いても、結局は
「デクノボート呼バレ、誉メラレモセズ、苦ニモサレナイ」。
「サウイフ者ニ 私ハナリタイ」
といふのですから、それが人生の目的です。
読めば読むほど、気づくことがある。立派なお経だなと思ひます。

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