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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

コンドルとイーグル

2021/07/23
読書三昧 0
コンドルとイーグル

これからやってくる素晴らしい世界の話』の著者、ヒロカズマさんは、なかなかの自由人といふ印象を受けます。大学の卒業記念に数か月間オーストラリアを旅行したのを皮切りに、南米アマゾン、南インド、北極圏、アンデス、ヒマラヤ、ブータン王国、アリゾナ州セドナなどをかなり長期に亘つて経巡つてゐるのです。

本書はその旅の体験談をベースに、一つのテーマを追求してゐます。そのテーマとは、

コンドルとイーグルはどうしたら同じ空を飛べるか。

といふことです。

このテーマの元になつたのは、アンデスに暮らす部族に伝はる伝説です。

それによると、昔、人類は一つの種族だつた。それがあるとき、2つに分かれ、別々に進化するやうになつた。

一つは、自然との調和を大切にするコンドル族。もう一つは、思考と科学を好むイーグル族です。

ところがあるとき、どちらの種族も滅亡の危機に陥つた。コンドル族は物理的な欠乏で、イーグル族は自滅的な危機から。

伝説によれば、2つの種族はお互ひを認め合ひ、融合することによつて、この危機を乗り越える。人類は新しい一つの種族として生まれ変はり、大いなる繁栄を謳歌する。

この伝説を聞いて以来、ヒロさんの頭から離れない。

「この危機とは、現代のことではないのか。コンドル族はアマゾンやアンデスに暮らす先住民族で、イーグル族は我々の文明。もしさうだとすれば、この2つが融合して素晴らしい世界が開かれるといふ話になる」

それなら、どんなルートでその新しい世界が開かれるのか。その融合ポイントはどこなのか。それを見つけようとするのがヒロさんの旅の目的であり、この本が目論む最終結論でもあります。

もちろん、これはあまりに大きなテーマです。一個人の探求で簡単に最終結論が出るやうなものとは思へない。

ただ、この本の魅力は、最終結論に到達しようとするそのプロセスにあります。

著者があるところに足を踏み入れる。するとそこでの出会ひが次の旅へとつながる。そんなふうにして、一見脈絡のなささうな旅(ほぼ冒険と言つてもいゝ)が、結果的には必然的な繋がりをもつて展開していくのです。

どこに行つたとしても、著者の頭にはいつも「融合ポイントはどこなのか」といふ問題意識がある。その一本の糸でつながる体験の中で、徐々にポイントが見えてくる。その、半分小説のやうなストーリーが面白いのです。

最後まで読んでみると、正直に言つて、ポイントの吟味は詰めが甘いと思ふ。しかしその吟味の一つ一つには、著者の体験による実感が滲み出てゐる。人類全体が変はるためには、まづ気づいた個人が最初の変化をつけるしかない。さういふ意味で、著者の吟味からは「融合への意志」が伝はつてくるのです。

その吟味のいくつかを、何回かに分けて紹介してみようと思ひます。

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なるほど、小林正観2
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