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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

脳を休ませる

2021/05/03
思索三昧 0
茂木健一郎
脳を休ませる

脳を休めることの重要性について、脳科学者の茂木健一郎さんが解説してゐます。

効果的な休め方は、一言で言つて、
情報の心地よい遮断
といふことです。

睡眠は基本的に必要です。しかし目覚めてゐるときにできる脳の休息もあつて、それが情報の遮断。ちょうど今、仕事オフのゴールデンウイークにお勧めの試みです。

情報の遮断といふのですが、完全な遮断はあまりいゝことではない。「心地よい」程度の遮断がいゝといふのです。

茂木さんが自ら実践し人にも勧める方法が、ウォーキングや緩めのランニングです。しかも移動するコースは、できるだけ馴染みのいつものコースがいゝ。

目の前を景色の情報が流れていくが、馴染みの景色なので特別に注意する必要がない。茂木さんの言ひい方を借りれば、「オプティカル・フロー」として自分の周りを流れていくだけ。それくらゐの情報がちょうどいゝといふのです。

かういふ状態のとき、脳はDMN(Default Mode Network)で、これまでに蓄積した情報を整理し始める。新しい情報の流入を止めておいて、過去、個別に入力されてきた情報群を分類したり、関連付けたりするといふのです。整理した結果、それまで思いもしなかった新しい知見が閃いたりする。

これでは脳が働いてゐるのであつて、休んでゐるやうには見えない。さう思へます。しかしどうもかういふときに脳は最も休息を得られるやうなのです。

働いてゐるやうでありながら、休息する。脳の働き方には二通りあると言つたらいゝのかも知れない。

仕事をバリバリ進めるときにはDMNをオフにして、脳のモードを外向きにする。これは本当に脳が「働いてゐる」といふ状態です。

一方、仕事から離れるときにはDMNをオンにして、脳のモードを内向きにする。このときも、脳は働いてゐると言へばさうなのですが、謂はばアイドリング状態。エンジンは動いてゐるが、車輪との間の歯車が離れてゐる状態です。

この2つをうまく使ひ分けるといふことです。

茂木さんによると、我々は誰でも自分の内部に価値のある宝をたくさん持つてゐる。ところが、ふだん脳が外向きだと、それにあまり気がつかないといふのです。だからときどき脳のモードを切り替へるのがいゝ。

ところで、この「脳を休ませる」といふ以外にも、「脳を〇〇させる」といふ言ひ方がいろいろあります。例へば、「脳を騙す」。あるいは「脳を鍛へる」。

このやうに言ふとき、「脳を〇〇させる」主体は誰なのか。この主体は脳を指揮し、コントロールする司令官です。

脳を最大限に働かせようとすれば、司令官は脳のDMNのスイッチをオフにする。休ませたいと思つたら、スイッチをオンにする。そのスイッチのオンオフ如何で、脳は司令官の指示通りに動く。

この司令官の名前を「私」と呼んでみませう。この「私」は、ある意味で脳以上の働き者です。

なぜなら、脳が働く必要があるときには働くやうにモードを切り替へ、休ませようとするときには休むモードに切り替へる。脳が働いてゐるときはもちろん、休んでゐるときも「私」は休んでゐないのです。



このブログで2回ほど韓流歴史ドラマ「イ・サン」を紹介しました。「私」と「脳」の関係を見ると、ちょうど「王(イ・サン)」と「臣下」の関係のやうに思へます。

王は、能力があり忠誠心もある臣下を登用し、重要ポストに据ゑる。実務はその有能な臣下たちが遂行する。危険なこともある。難しい折衝もある。大変な業務です。

しかし、その背後にあつて、王は昼夜休まない。臣下が働くのに、王が休むことができないといふのです。

そして、王は
「民は国の宝だ」
と考へ、慈しまうとする。

臣下はその民を守るための働き手なのです。

「私」も自分の中に貴重な宝が眠つてゐるのを知つてゐる。その宝を有能な臣下である脳に探らせ、見つけ出して、その価値に相応しい応接をしようと考へる。だから、脳を休ませるときがどうしても必要なのです。

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