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亀卜で決めよう

kitasendo
亀卜

「亀朴(きぼく)」といふ古い占ひがあります。亀の甲羅に熱を加へて、生じたヒビの形状を見て吉凶や方角などを占ふものです。

起源は古代中国で、殷の時代には盛んに行はれてゐたものが、漢代には衰へ始め、唐代になると卜官も絶えた。日本には奈良時代に伝来し、現代でも宮中行事などでは大嘗祭で使用する稲と粟の採取地の方角を決定する際に用ゐられてゐます。

亀の甲に現れるヒビの形に注目するなど、変はつた発想だなと思ふが、かういふ占ひには占ひの良さもあると思ふ。

亀卜において、どの形をどう読むか、詳しくは知らない。大体、その実施と技術の伝承は秘事かつ口伝であるから、一般には公表されない。

それでも、宮中での決め事の際に用ゐられたことを考へると、国策に関はる重要事項について、人智に頼るよりも神意を伺はうとしたわけでせう。神意を伺ふのに、そこでもし小賢しい細工をしやうものなら、それをする人には天罰が下る。さういふ危惧があるから、勝手なことはしにくかつたと思はれます。

まさに、ここにこそ占ひを用ゐ理由もあつたでせう。

人の知恵より神の知恵に信頼を置く。もし、ヒビの形に神意が反映されないとしても、それでも人の知恵よりはましなのではないか。さういふ判断もあり得ます。なぜか。

人の知恵といふのは、往々にして実に信用できないものです。特に国策に関することなど、国家の重要事を決する際、そこには権力と金が絡む。人の判断と決定は、その2つをわがものとする方向で為される可能性が常にあります。

その可能性を排除するのが占ひです。ここには人智が介在しない。だから国家の重要事であればあるほど、人智ではなく占ひで決める。これは古代人たちの卓越した知恵ではなかつたかといふ気がします。

こんなことを考へるには理由がある。最近の国策決定プロセスを見ながら、人智(科学的根拠と言はれるものでさへ)の装ひをした歪んだ決定が随分あるやうな気がするからです。

緊急事態宣言なども含めたコロナ禍対策しかり。レジ袋有料化や自然エネルギー推進などの環境対策しかり。かういふところにも科学者が出てきて「科学的には」と言ふものの、それも本当に信用できる人智なのか、かなり疑はしい。

疑はしさの中心は、人の正直さなのです。人の心がだんだんと正直さを失つてゐる。政治家の言動はもとより、科学的データでさへ、恣意的に使はれてゐるのではないか。それが最も大きな不安です。

明治天皇の御製に、有名なかういふ歌があります。

よもの海 みなはらからと思ふ世に
など波風の たちさはぐらむ


このやうな歌の生まれる源を「まこと」とか「まごころ」と呼んできたと思ふ。人の心にかういふものがある限りは、我々はお互ひを信じ合つて、安心して暮らせるでせう。しかしそれがなくなると、どんなに制度を改変しても、科学的根拠を持ち出しても、暮らしには不安が募る。

さういふ時代には、下手な人智を集めないで、亀卜で決めるほうがむしろ賢明かも知れない。

非常事態宣言を出すべきですか。亀卜で。
消費税を上げるべきですか。亀卜で。

なんなら、然るべき方がサイコロを振るのでもいゝ。

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Admin:kitasendo