病になつても、病気にはならない
斎藤一人といふ人が、
「私は病(やまひ)になることはあるが、病気になつたことはない」
と言つてゐます。
面白いことを言ふ人です。単なる言葉の綾ではなく、物事の核心を突いてゐると感じます。
斎藤さんでも、ときどきは風邪くらゐ引くことがある。しかしそれは風邪といふ病に罹つたのであつて、必ずしも風邪といふ病気になつたのではない。
病と病気と、何が違ふか。
風邪で言へば、喉が痛い。咳が出る。熱もあつて頭が朦朧とする。これが風邪といふ病です。
これに対して病気とは、喉が痛くて大変だ。一体誰にうつされたんだらう。風邪が高じて肺炎にでもならないといいけど。そんなふうに気に病むことを、文字通り病気といふのです。
だから斎藤さんは、
「私は風邪といふ現象には見舞はれるが、それに自分勝手な色をつけて気に病むことはない」
と言つてゐるわけです。
風邪に限らず、この世の出来事自体はすべて「現象」です。それ自体は無色透明であつて、いかなる色もない。
ところが、この「現象」を良いとか悪い、損とか得とか、色をつけるのが私の意識です。そして私が「良い」とか「得」とかと色をつける現象が重なると、「運がいゝ」とか「ついてゐる」と考へて嬉しくなる。反対に、「悪い」とか「損」と思ふことが続くと、「運気が下がつてゐるのでは」と気にかかる。
今から3年ほど前のこと。仕事の出張があるのに、しばらく前から体調が崩れ始めたのです。喉が痛くなり、熱つぽい。これはどうも風邪だなと思ふが、出張を取りやめにはできない。
無理を押して出かけたものの、熱は上がる一方。仕事の真つ最中に、40度近くになつた。意識は朦朧、2日間で何とかやり終えて、這ふやうにして家にたどり着いた。そしてそれからさらに2日ほど高熱が続いて、布団にくるまつて寝る以外、何もできなかつた。
病は確かに辛い。しかしこの10年に1回くらゐの高熱は、結果的に悪くなかつた。熱の最中でも何となく見通しが明かるかつたのですが、熱が引いてみると、体調がすこぶる良くなつた。
特に内臓の調子が好転し、食欲は増進するし、便通も見違へるやうに改善したのです。腸内フローラ(花畑)がすつかり植ゑ替へられたやうな気がした。
病といふのは、気を病むために起こるのではなく、むしろ病んで滞つてゐた気を通すために起こるのではないか。これは単に身体のことに限らない。人生全般に当てはまる。そんな気がします。
良いとか悪いとか、損とか得とか、意識では軽々に測り切れないのです。

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