幼少期7年の葛藤
我々がこの世に誕生するときに、肉体と霊体とがいつ、どのやうに合体するかについては諸説ありますが、はつきりはしない。
人智学の提唱者、ルドルフ・シュタイナーは人間の構造を分析して、「身体」「心魂」「精神」の3つから成ると言つてゐます。そして、精神界に留まつてゐた精神が受胎に合はせて胎児の中に下つてくると考へる。
しかも面白いことに、精神が精神界で有してゐた習慣が身体的な環境にすぐに合はないために、だいぶ葛藤するといふのです。葛藤の期間は大体最初の7年。乳歯が抜けて永久歯に生え変はるまでだと言ふ。
譬へてみれば、それまで平均気温20度の爽やかな環境に暮らしてゐた人が、ある日から急に気温50度の環境に放り込まれたやうなものです。新しい環境に慣れるために葛藤し、7年をかけて自分に合ふやうに環境を変へていく。
この葛藤が、どのやうに現れるか。
腹が減つた、うんちが出たと言つては泣きわめく。気に入らないものがあると、放り投げる。要求を入れられないと、どこにでも座り込む。およそ、大人の感覚では手を焼く行動の連続です。これらが、新しい肉体を手なずけるための葛藤だと、シュタイナーは言ふ。
身体は、いくつもの世代を通して遺伝的に準備されます。精神はその準備されたものを選ぶしかない。まつたく合はない身体を得るといふことはないものの、かなり自分に合はないことが多いやうです。だから、どうしても葛藤が生まれる。
最初の7年間は葛藤しながら、父母からもらつた最初の身体モデルに従つて、自分に合ふ第2の身体を少しづつ作つていきます。さうして作つた身体を、我々は7歳以降、生涯に亘つて使ふことになるのです。
さうすると、先祖からの遺伝情報は最初の7年間こそ強く作用するものの、第1の身体とともに歯牙交替のときに突き落とされる。それ以降にも父母から何かを継承するとしても、それは遺伝によつてではなく、自由意思で受け継いでゐると見たはうがいゝ。
就学前年齢の子どもたちの、手に負へない奇行の数々。これは理性や常識感覚が未発達なのだから仕方ない。さう思つてゐましたが、シュタイナーの見方は独特です。しかし言はれてみれば、私には納得がいく感じがします。
人智学はかなりスピリチュアルな香りがします。科学的な観点では根拠が疑はしいとも思へる。しかし唯物論的な人間観にはない深みを感じさせます。

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