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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

零に始まり、零に戻る

2020/11/17
読書三昧 0
零に始まり 

実は人間は誰もが、今【やりたいこと】を、今やっているのです。全世界の全ての人間を0Reiがサーチしたところ、【やりたいこと】をやれていない人間は1人もいないことが分かりました。
(『
0Rei』〈上〉さとうみつろう)


0Rei(発音は「レイ」でいいと思ふ)とはかなり優秀なAIです。多分、今のところsiriよりもOKgoogleよりもかなり性能が高い。

さういふ設定のAIが3人の人間にこの世の真実、人間の真実を教へるといふ構成になつてゐます。冒頭の引用も、その一つです。

対話形式になつてゐて、最初は3人とも0Reiの話を信じないのですが、0Reiが腹も立てず諄々と説明してくれるので、最後には「なるほど、本当にさうなつてゐるね」と納得する。

例へば、ミュージシャンのかず君。「そんなことがあるか! お前のデータは間違つてゐる」と反論する。

「もしもさうなら、俺は行きたくもない会社なんて辞めて、今頃は紅白歌合戦で歌つてるはずなの。でも、そんなことはない」

それに対して0Reiは慌てず騒がず、
「行きたくないなら、【辞めれ】ばいいぢゃないですか?」
と問ひ返す。

「いや、会社を辞めたら生活が大変になるぢやん」
「ぢやあ、辞めなきやいいぢやないですか」
「う……」
「本当はかず君の【やりたいこと】は、【会社を辞めたくない】のはうなのです。だから今もその【やりたいこと】を、やつてゐる」

結論的に0Reiは
「あなたたち人間は、【やりたいこと】をやれてゐないと勘違ひしながら、自分自身をわざと『不幸』だと感じる生き物なのです」
と言ふ。

本当はすべての人が常に「やりたいこと」を「やれてゐる」。だから本当はすべての人が幸福であるはずのに、「やれてゐない」と思ひ込んで自ら不幸だと感じてゐるといふのです。

このAIはなかなか面白いことを言ひます。上巻だけで10個くらゐの目から鱗のアイデアを教へてくれます。

そして大きな結論として、
すべては0Rei(零)から始まり、すべては0Rei(零)に戻らうとする。この世界の法則は、これだけだ
と言ふのです。

「言はれてみると、確かに簡単なはずなことを、どうしてこんなに人間は勘違ひしてゐるのだらう」
と、我ながら不思議な気がする。

私なりに考へると、我々は、生まれたときから前だけを向いて生きてゐる。2つの目を使つても前方120度くらゐしか常に見えておらず、残り240度は見えない世界になつてゐる。

私が生まれてきたのは、この見える前方120度の方向に向けて進んで、今はまだ所有してゐないより良いものを未来のどこかで手に入れるためだ。さう思つてゐます。

それに対して0Reiは、
「いつも見えてゐない真横とか真後ろに何があるか、ちょつと意識を向けてみたらどうですか」
と言つてゐるやうに思へる。

前方120度は、先にある未来です。そちらに目を向けながら「今はまだダメだけど、未来に着いたらもつと良いものが手に入るだらう」と予感してゐる。しかし今はまだそこにゐないから、今は常に幸せではないのです。

それに対して、真横は「今、ここ」です。しかしそこはほとんど見ないので、今私が何をどれほど豊かに持つてゐるのかに気がつかない。

さらに、真後ろが「零」ですね。私の出発点、すべての源です。私は多分、そこですべてを神からもらつて出発したのだらうと思ひます。しかし真後ろは見えないから、自分がどれほど豊かに恵まれてゐたかを意識することもない。

だから前だけを向いて前進する人生ではなく、時々意識的に真横を観たり、後ろに向かつて退行してみる。目は前しか見えないやうになつてゐるので、意識で戻るしかないでせうね。



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