うやむやになつてほしい
黒川伊保子さんは優秀なリケジョだが、感性の人でもある。
著書も多い。
その中でも
『妻のトリセツ
は合わせて50万部のベストセラーになつてゐます。
(この本は非常に面白い上に参考にもなるので、次回にご紹介します)
youtubeに上がつてゐる「ラジオ版学問ノススメ」にゲストとして登場し、得意分野の話題が盛り上がる。
その最後に、日本語と日本を愛する黒川さんらしい話が出てきます。
先だつて「女系天皇」についての議論が熱を帯びかけたことがある。
その時黒川さんは
「長い伝統の話と男女平等みたいな話を同列で論じるのはおかしい」
と感じてゐて、
「できれば、この話はうやむやになつてほしい」
と願つてゐた。
すると本当にその話題はいかにもうやむやな感じでフェードアウトした。
それを見て、黒川さんは
「いかにも日本らしくて、とてもよかつた」
と喜んで言ふのです。
白でもなく黒でもなく、うやむやの内に立ち消えていく。
かういふことが日本には確かに多い。
しかしそれは決して悪いことではなく、日本が日本らしくある評価すべき姿だと黒川さんは考へてゐるやうです。
黒川さんの専門である脳科学から考へると、男性脳と女性脳はその初期設定がまつたく違つてゐる。
だから一緒に暮らしてゐても、2人は違ふものを見て、違ふ感じ方をしてゐるといふのです。
その2人の間に「ただ一つの正しいこと」などはない。
白黒などつかない。
それを無理やりに白か黒かにしようとすると、却つて2人の関係はまづいことになる。
それで黒川さんは
「理論的には結論をうやむやにしたまま、気配で寄り添ふといふのが大人の男女の良い関係なんです」
と言ふ。
これは単に、男女においてのみ言へることではなく、結局はどんな人でも同じものを見て同じやうに感じてゐる人はゐない。
さういふ科学的、感性的な知見があるので、黒川さんは
「白黒をはつきりさせることは、必ずしも良いことではない」
と考へるのです。
その上、特に日本語は「白黒をはつきりさせない」といふ特性があるとも言ふ。
日本語は子音と母音とがペアになつてゐるために、あったかい。
それで、話してゐる内に何だか優しい気持ちになつて、お互ひに親しみを感じるやうになる。
すると、意見の違ひはあるけど、まあそんなに拘る必要はないんぢやない? といふ感じになる。
「それが日本の良いところぢやないかな」
さう言はれると、
「ほんとにそんなうやむやで、いいのかな?」
といふ不安がある一方で、
「それも悪くない。特に家庭生活では正義を一つにすれば雰囲気が殺伐とするな」
といふ気もするのです。

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