お子さんの心臓に穴があります
昔書いた記事「心臓に穴のある赤ちゃんは、いらない?」の再録です。
『「いい質問」が人を動かす
の中に、こんな実話が紹介されてゐました。
初めての子どもが生まれたばかり。 母親になつた喜びに浸つてゐる女性に、主治医が告げます。 「お子さんの心臓に穴があります」 母親は一瞬にして奈落に落とされた気持ちになり、夜になると、一人、こつそりと新生児室に行つてみる。 「あの子を育てていけるだらうか? 命は助かるだらうか?」 不安で目の前が真つ暗になり、涙が流れて止まらない。 その時、一人の看護師さんが通りかかる。 彼女は泣き崩れる母親を別室に通し、心の内をすべて聞いてあげました。 そして、優しい口調で一言、かう質問したのです。 「心臓に穴のある赤ちやんは、いらない?」 |
この質問のところまで読んで、私の眼はこの一言に釘付けになつたのです。
「どうして、こんな質問が出てきたんだらう?」
5分考へては読み直し、10分考へては読み直してみる。
「この質問、私には出てくるだらうか?」
出てこないやうな気がする。
おそらく、質問ではなく、励ましの言葉を探すやうな気がする。
「大丈夫ですよ。赤ちやんの命は助かります。お母さんがしつかりしないと、赤ちやんが困りますよ」
とか。
医療の専門家である看護師さんが言へば、励ましにはなるかも知れない。
しかし、絶望の淵にいるお母さんに、どれほどの希望になるだらうか。
うつろに響くやうな気がする。
しかし、この看護師は最初に励まさず、質問をしたのです。
その質問は、お母さんを一瞬にして、重要な気づきへ立ち返らせたのです。
「心臓に穴があらうがなからうが、この子は私が授かつたかけがへのない子どもだ」
母親としての「感情」が彼女の心を満たしました。
彼女は迷ふことなく、即座に、
「いいえ」
と答へる。
その後に、看護師は母親を励ますのです。
「さうでしよ。大丈夫。心配なら、いつでも病院に来て」
この本の著者、谷原さんは、「いい質問」について、かう考へます。
いい質問は、まづ、相手の「感情」を動かす。
感情が動いた後で、「理性」を納得させる。
さういう質問は、確かに「人を動かす」。
看護師の対応は、まさにその理論そのものです。
しかし、さういう質問が、あのやうな切羽詰まつたところで適切に出るか。
これがとても難しいと、私は感じるのです。
(再録終はり)
「心臓に穴のある赤ちやんは、いらない?」
「いいえ」
といふ会話。
女性看護師とお母さんといふ女性同士のやり取り以外ではあり得ないと思ふ。
お母さんにとつて赤ちゃんはどういふ存在か。
どんなふうに「母性のスイッチ」が入るのか。
男性(お父さん)には感覚的に理解不能な気がします。
これもはやり、お母さんを見つめる助産婦さんの証言です。
「赤ちゃんの夜泣きに感謝しなさい」

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