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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

私は私の正義を捨てる

2020/01/14
生活日記 2
20200114 

老年の門口に差し掛かつてゐる私の人生が集中的にシェイプアップされてゐるやうな気がします。
人生をもう一段磨き上げ、まとめる段階に入つたやうです。
シェイプアップしてくれる方が身近に何人かゐるのですが、何と言つてもその第一人者はおばあちゃんです。

昨夜悟つたことが一つあります。

しばしばあるやうに、昨夜もおばあちゃんとの間にワンパターンの言ひ合ひがありました。

2人の孫の名前を出して
「今夜は帰つて来るのか」
と尋ねるので、また今夜も来たかと思ひながら
「今夜は帰つて来ない」
と答へる。

しばらくするとそれを忘れてまた同じことを聞くのが分かつてゐるので、気が重くなる。
案の定何度か同じ質問が繰り返されるうちに、私の言葉は次第につつけんどんになる。

「帰らないと言つたぢやないか」
ときつめに言ふと、
「そんなの初めて聞いた。どうして怒るやうに言うんかね」
とおばあちゃんのはうも語気が少し荒くなる。

しばらくしてまた同じ質問がくるので、今度はもう答へない。
答へようとすればまた怒るやうになると分かつてゐるから、黙つてゐる。

すると、
「どうして聞いても答へんのかね? 無視するのか」
と怒り、そして次第に半泣きになる。

私も腹に据えかねて、
「帰つて来ないといふ息子の言葉が信じられないのなら、孫たちが帰つて来るまで起きて待つてなさい」
といふ捨て台詞を残して寝間に行く。

夜中に時々目が覚めて耳を澄ませると、台所のはうからごとごとと音が聞こえて来る。
どうやら本当に起きてゐるらしい。

「もしかしたら朝まで寝ないで待ち続けるかもしれない」
と気にかかる一方で、
「今のおばあちゃんには朝とか夜とか昼とか、時間の観念がない。孫の帰りを待ちたいのなら、一度好きなだけ待たせておかう」

さう心を定めたのです。

そして布団の中で考へを巡らせるうちに、閃いたことがあります。

私がおばあちゃんに対するとき、私の感覚で対するので私の正義を押し付けようとする。

夕方なのに昼だと言へば
「もう夕方だよ、昼ご飯を食べてだいぶ経つでせう」
と私の正義を納得させようとする。

それは普通の感覚なら正しいかも知れない。
しかし相手は目もよく見えないので、明るさが分からない。
忘れるので起きてからどれくらいの時間が経つたかも分からない。

普通なら、孫は今夜帰らないと一度言へば分かるはずなのに、相手は10回言つても分からない。
分かれと言へば怒るし、何も言はなければ無視すると言つて泣く。

「お父ちゃん(夫)が生きてくれてゐたらよかつたのに。お父ちゃんは一度も大声で怒ったことがない」
と言つて嘆くので、
「ああ、父親に叶はないダメ息子だなあ」
と私も少し落ち込む。

どうしてこんなことの繰り返しが続くのか?
それは、私が自分の正義を相手に力づくで認めさせようとしてゐるからだ。

それなら、この繰り返しの泥沼から抜け出すには、私が私の正義を捨てればいいのではないか。

私は自分の目がよく見え、耳がよく聞こえ、今が何時かも分かつてゐる。
おばあちゃんはそれらがみんなぼんやりしているのだから、おばあちゃんを無理やりはつきりした世界に引つ張つて来ようとせず、私のはうがそのぼんやりの世界に入ればいい。

私も目がよく見えない、耳もよく聞こえない、時間の感覚もはつきりしない、さういふ世界に生きてゐると思へば、おばあちゃんの言動はなんら変ではない。

「さうだ、金輪際私は私の正義を捨てる」

さう心に定めて朝起きてみると、本当におばあちゃんは夜中に寝ないで何かしてゐたやうです。

「今朝は何だかいたしい(体がきつい)」
と言ふ。

さもありなん。

徹夜をしても眠いと言はない。
多分、徹夜したとは思つてゐない。
相当頑丈なおばあちゃんだなあと感心する。

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Comments 2

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はちみつ

精一杯

教育部長さんのお母様と直接お会いしたことがないのですが、文章から察するに軽い認知症でしょうか?

教育部長さんも大変だなぁと思うと同時に、羨ましく思います。
私の両親は2人とも他界しているので、会話はもうできません。親子で会話のできる教育部長さんが、本当にうらやましいです。

精一杯、精一杯、出し尽くすまでお母様を愛してください。
この地上にいる間に、愛し尽くしてください。
私はそれが出来なかったので、後悔ばかりで毎日反省しています。

2020/01/15 (Wed) 22:15
kitasendo

教育部長

Re: 精一杯(はちむつさんへ)

今だけ見れば大変なやうに思ひますが、今こそがチャンスだとも言へますね。
アドバイス、胸にとめておきます。有り難うございます。

2020/01/18 (Sat) 13:43