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元教育部長の講義日記

家庭連合の教育部長を辞しても思索する日々

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陰の立役者たち

20191228

今年最後の祈祷会で観た映画
「ドリーム」(原題はHidden Figures)
がとても面白かった。

秀作だと思ひます。
基本は実話に基づいてゐますが、映画としての脚色が巧みです。

主人公の黒人女性キャサリンは米国NASAのラングレー研究所で有人宇宙船計画を担ったグループの一人。
子どもの頃から飛び抜けた数学の才能を発揮し、奨学金で大学を卒業してNASAに入つたのです。

時代は1960年代初頭で、アメリカにはまだかなり根強い人種差別が存在してゐた。
私にとつて意外だつたのは、その時代にNASAの研究所に相当数の黒人女性の研究グループがあつたことです。

キング牧師を中心とする民権運動も行はれる中、彼女たちは対立的ではなくその実力を持つて白人主導の組織に食ひ込んでいき、次第に認められていくのです。

彼女たちの多くは、その先祖が奴隷としてアメリカに連れて来られた人たちでせう。
長い期間、不遇でもあり、差別も受けてきたでせうが、その子孫たちの中から才能ある者たちが出てきて、アメリカ発展の力となつた。

そのアメリカといふ国が人種差別といふ負の側面も持ちながらも、人種の壁を痛みとともに克服しつつダイナミックに発展していくその有様を見事に描いてゐる。
その描写の手腕は期待以上で、とても感心したのです。

研究所の本館には非白人用のトイレがなかつた。
それでキャサリンは日に何回か、800メートル離れた別の建物まで往復して用を足す。

肝心な時に姿を消すキャサリンに対して、研究グループのリーダー、ハリソンは
「どうしてこんな時にお前はいつもゐないんだ?」
と叱責する。

黒人用のトイレが本館にないといふこと自体を意識してゐなかつたのです。
さういふ白人男性たちはもともと黒人女性の仕事上での活躍を認めるはずがない。

それは今の我々の感覚から見れば
「理不尽な差別だ」
と感じられますが、おそらく当の彼らにしてみれば、
「トイレが別々なのも、仕事に差別があるのも当然」
なことだつたのでせう。

ところがさういふ中で、キャサリンたちは意外にめげてゐない。
例へば、彼女には可愛い2人の娘がゐる。
夫とは死別したやうですが、彼女が娘たちを可愛がる家庭での様子はとても愛情深いものです。

しかも再婚を求めてきた軍人の男性がまた、とても良い男。
家族みんなで夕食をするときに、準備した結婚指輪を出しながら求婚しようとすると、娘たちが質問したり助け舟を出したりして、家族が見守る前でキャサリンは求婚を受け入れる。

さういふ家庭での幸福といふものが社会での差別の痛みを吸収し、和らげているやうに見えます。

映画として、ことさら白人の差別を指弾してもおらず、黒人の惨めさを強調してもゐない。
ごく緩やかに、人間としての能力と人格を持つて、認められるものは認められ、受け入れられるものは受け入れられる。
さういふ描き方です。

事実との間にどれだけの違ひがあるかは分からない。
多分事実そのものではないでせう。
しかし映画作成者のスタンスとしては好ましく、この2,3年で観た映画の中でも一等の秀作だといふのが私の実感です。



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