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どうしてこんなに腹立たしいのだらう

kitasendo
20191001

先般、国連で温暖化反対の演説をしたスウェーデンの16歳の少女がひどく怒つてゐるやうに見えたのが気になりました。

「私たちを裏切る道を選べば、許さない」
とかなり強い口調でした。

怒るといふ言葉を言ひ換えると「腹が立つ」。
これを形容詞にすれば「腹立たしい」。

「腹立たしい」
の最後に「しい」といふ言葉がついてゐます。

この他にも、
「嬉しい」
「悲しい」
などといふ「感情」を表す多くの言葉の最後についてゐる「しい」。

これは
「魂(たましい)」
といふ言葉の「しい」です。

「たましい」の「たま」は人間の本体である「霊」あるいは「霊人体」を意味するのに対して、「しい」は人間の心の動き「感情」を表します。

「たま」は「しい」の働きを通して自らの見えざる姿を形にするとも言へるし、「しい」を栄養素として育つとも言へる。

自分の日常を振り返つて、生活感情を点検してみると、
「嬉しい」
とか
「悲しい」
とかはあまり強いものは少ない。

「嬉しい」
はもつとあつてほしいと思ふが、意外と
「腹立たしい」
が多いことに気がつきます。

昨夜も相当腹立たしかつたのは、おばあちゃん(老母)が夕方から寝るまでの間に何度も繰り返し同じことを尋ねることです。

「2人の孫は今夜帰つて来るのか?」

帰つて来るなら玄関も開けておき、門灯も点け、出来れば帰つて来るまで寝ないで待つてやらねばならないと思ふ。
それで帰るかどうかが気になつてしやうがないために私に尋ねるのですが、聞いたことを3分後には忘れるのでまた尋ねる。

これが一晩に一度や二度ではない。
昨夜は一定の間をおいて10回ほども尋ねるので、さすがの私も段々とイライラし、「腹立たしい」気持ちになり、5,6回目頃からは声も大きくなり言葉も荒くなる。

おばあちゃんの様子を冷静に見ると、自分が尋ねたことも私からの答えも、本当に全く覚えてゐない。
だから悪気は全くない。

しかしそれが分かってもなお、私は「腹立たしい」のです。

このやうな事態はもちろん昨夜だけではない。
これまでも毎晩のやうに繰り返されてきたし、これからも続くでせう。

腹立たしさがピークに達した昨夜、私は随分悩んで解決策を模索しました。
そして頭を絞つて出てきた方法が3つ。

第一は、おばあちゃんの記憶力を回復させること。
さうすれば10回聞いてゐたのが3回に減る。
しかしこれは現実的ではないでせう。

第二は、私の記憶力をおばあちゃんのそれに近づけること。
おばあちゃんが忘れて繰り返すのを私が覚えてゐるが為に腹が立つのです。
だつたらおばあちゃんがさつき聞いたことを私も忘れたら腹が立たない。

しかしこれも難しい。
なまじ覚えてゐるから腹が立つ。
皮肉な話です。

「真の愛は、与へたことを忘れる」
といふのですが、忘れるのは与へたことだけではなく、与へたのに何も返してくれなかつたということも忘れないとだめでせう。

忘れるといふことの中にはかなり深い意味があります。

ともあれ、あと20年もたてば私が努力しなくても、第二の方法は可能になつてゐる可能性がある。
しかし今は無理です。

もつとも20年後には私が今のおばあちゃんの立場だし、肝心のおばあちゃんはいないでせう。
すると今何とかするしかない。



第三の方法は何か。
繰り返し同じことを尋ねられるのを喜ぶことです。
あるいは楽しめればいい。

「おばあちゃんは今夜同じことを4回聞いたね。今夜寝るまでにあと何回聞くか、楽しみだね」
とからかえば、おばあちゃんも
「さうだつたかね。もう4回も聞いた? 覚えてない」
と言つて苦笑ひする。

こんなことを考へながら、「腹立たしい」といふ感情についても少し気づくことがありました。

「腹立たしい」といふ感情は、小さなことをきつかけにして結構容易に強くなる。
やり取りを通して意外なほど強くなつて、それが言葉や態度に如実に現れ、そして最後にはとても苦々しい自己嫌悪を残すのです。

そもそもなぜ「腹立たしい」気持ちになるかといふと、
「自分の思ひや考へは正しい。相手が私の思ひと考へと違ふのに、相手はそれを直さうとしない」
と思ふからでせう。

私の考へた第一の解決策のやうに、自分の思ひ通りに相手を変へようとすると、これは極めて至難の業です。
難しいからイライラし、さらに腹が立つてくる。

16歳のスウェーデンの少女も、その主張の客観的な正当性は別にして、
「自分の考へは正しく、それに従つてくれないこの世の主権者たちが間違つてゐる」
と考へて(思ひ込んで)ゐるやうに見えます。

主権者たちが少女の考へ通りにしてくれない限り、彼女の表情から怖いほどの怒りの感情は消えないでせう。
問題の解決も難しいと思はれます。

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2019年10月03日 (Thu) 11:42
kitasendo
Admin:kitasendo