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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

偉大な「捨て石」

2019/05/14
原理を学ぶ 0
20190514

今日「イエス路程」の講義をした後、受講者に感想などを聞いてゐると、
「いつも思ふんですが、イエス様の生涯はあまりに歯がゆいといふか、もう少しうまくことが運ばなかつたんだらうかといふ気がするんです」
と言はれる。

似たやうな思ひは私にもなくはない。

生まれ方も不遇だし、育ち方も恵まれない。
成人してもなかなか結婚ができない。
近かつた洗礼ヨハネは不信をして袂を分かつ。
宗教指導者たちはことごとく反対に回る。
信頼した弟子が裏切る。
十字架に臨んで、弟子たちはみな逃げる。
切実な祈りを捧げても神様は答へない。
霊界に行くと、3日間地獄に送られる。

これほど思ふにまかせない人生があるだらうか。

イエス様がなぜあのやうな社会的に受け入れがたい生まれ方をしなければならなかつたのか。
お父様のお話を聞けば、原理的に分からないことはない。

しかしそれでも、
「神様がなさることなら、もう少しよく準備できなかつたのだらうか」
といふ受講者の率直な感想も理解できるのです。

家に帰り夕食を作りながらあれこれ考えてゐると、ノアの時のハトが思はれます。

「神様はなぜあの時、2番目のハトに葉つぱを銜へて箱舟に帰らせたのだらう」

2番目のハトは将来来られる最初のメシヤ、イエス様を象徴してゐる。
その方は人類救援の使命をもつて来られるが、その時もし地上に罪が残つてゐれば葉つぱを銜へて(霊的救いの道を開いて)一旦地上を離れなければならない。
それは必ずさうなるといふことではなく、そのやうになつてはいけないといふ警告であると、理解されてきました。

しかし考へてみれば、そのやうに警告されるといふことは、さうなる可能性が大きいといふ想定が神様の中には避けがたくあつたといふやうにも思はれる。
神様はなぜそのやうに想定せざるを得ないのか。

ここから先は、夕食を作りながら私の頭に浮かんだ私なりの推論です。

それまでの復帰歴史の現実を見れば、人間の罪悪はあまりに大きい。
善に立ち返らせようとなさる神様の摂理とは裏腹に、人間はお互いに殺し、騙し、搾取し、不倫する。

ノアの時にも言はれた通り、
「すべてその心に思ひはかることが、悉く悪いことばかり」(創世記6:5)
であつたのです。

このやうな世の中に全き善の方、神様の一人息子を送るといふことは、その息子が尊ばれるためではなく、その世の罪悪のすべてを一人で背負つて浄めるためである。
初めから肉的霊的完全な回復など、望みやうがない。

せめて霊的救いの道だけでも開き、それを通して数百年あるいは千年以上をかけて人間の心を少しづつ浄めていき、人間が自らの意思をもつて神様に帰らうとする時代を待つしかない。

ある意味で、神様はその救いを2段階で考へておられた。
最初は聖(きよ)い方の犠牲と神様の役事を通して人間の心を浄め、現実的な救いの可能性が出てきたところで第2段階に入る。
それが第3のハト、再臨主の立場です。

第2のハト、救いの第1段階では、そのハトをできる限り苦労させる。
生まれも惨めであり、育ち方も不幸であり、公生涯も無理解と迫害の連続である。
その苦痛が大きければ大きいほど、第2のハトがそれを甘受される道がとてつもなく大きな蕩減条件になる。

人間の罪悪が許され消えていくには、それほど大きな条件が必要だと知つておられたので、神様は第2のハトを十分な基盤もないままに送られた。
むしろ第2のハトを送る以外に、そのやうな基盤はいつまでたつてもできはしない。
神様の心にはさういふ考へがあつたのではないだらうか。

私たち自身のことを考へても、さうでしょう。
自分がいくら善の人にならうと努力しても、自分の周りにはさういふ考へのない人もゐるし、むしろ私を苦しめて善に向かふ道を妨げる人もゐる。
そのやうなとき、周りの環境を切つて私だけが善の人になることはできないのです。

私も周りの人も、謂はば運命共同体であつて、お互い一緒に善くなつて行くしかない。
なぜなら、周りも善になつてくれないと、私自身の善も決して安着しないからです。
そのやうにならうとすれば、より善であらうと自覚する人がより多く犠牲にならねばならない。
それを喜んで行かねばならない。

犠牲になる人は「捨て石」のやうにも見えます。
神様は一つの偉大な「捨て石」をサタンに取らせた。

さう言つてはイエス様にあまりに申し訳ないかもしれませんが、イエス様は神様と人類のために自ら「捨て石」の生涯を喜んで行かれた。
歴史に二人とゐない偉大な方です。

(「捨て石」とは言葉が適切でないかも知れない。気がかりですが、一つの推論としてお読みください)

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