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まるくまーる(旧・教育部長の講義日記)

Don't be evil(邪悪になるな)

2018/08/17
読書三昧 0
20180817 

ことの是非について容易に断ずることは私にはできないが、興味深いテーマなので、引用してみようと思います。

引用元はダイジェスト版世界日報の「月刊ビューポイント」8月号の記事。
一つは、「軍のAI計画は『悪』ではない」(マーク・ティーセン)
もう一つは、「時代が求める公益資本主義」(原丈人)

米コラムニストのティーセンは、先ごろ米大手IT企業グーグルが米国防総省が進める「メイブン計画」から離脱すると表明した出来事を取り上げ、
「グーグルは恥ずかしくないのか」
と、グーグルの方針に反対を表明する。

「メイブン計画」とは、人工知能(AI)を利用して、ドローンからの映像をより分けたり分析したりするための軍事計画です。

グーグルのこの方針表明は、社是「Don't be evil(邪悪になるな)」に反するべきではないとする一部社員の反対署名を受けた処置。

だが、これに対してティーセンは、
「米軍は邪悪と言いたいのだろうか。… グーグルの従業員は善良であり、遠く離れた戦場で『真の悪』と戦う兵士を支援することはできないと考えている」のか、と疑問を呈する。

命を懸けて戦っている兵士たちのお蔭で、我々は平和な日常生活を謳歌できているのではないか。
また、AI技術を駆使したメイブン計画によって攻撃の精度が高まれば、戦闘員と民間人の区別がより正確になり、民間人の巻き添え殺害を回避できる可能性が高まる。

命を救えるだけではない。
例えば、グーグルは台湾へのAI研究・開発への大規模な投資を進めているが、この投資を成功させるには台湾の安全保障が必要条件になる。
中国が台湾に侵攻し、情勢が激変するのを防止しているのは一体誰だと思っているのか。

「グーグルは従業員の仕事や生活が、米軍が守る平和と安全の基礎の上に成り立っていることを理解していない」

「グーグルのような大企業は、(米国か中国かの)どちら側につくのかを決めなければならない」

「米軍が強いことが、平和を守る最善の方法だ」

米国、中国どちらの側でも、「殺傷力をより高めようとする」軍事力それ自体を「善」ということはできないだろうと思うが、ティーセンは「真の悪」があると考える。
「真の悪」を抑え込む軍事力であれば、それは少なくとも「相対的な善」にはなり得る。
だから、世界最強の軍事力を背景にした「パックスアメリカーナ」は善であり、それを破壊しようとしている勢力は悪である、とティーセンは考えるのです。

しかし、本当に「パックスアメリカーナ」は善なのか。
かつての湾岸戦争やイラク戦争も、「パックスアメリカーナ」の一環だったのか。
私には容易に判断しかねる問題です。

もう一つの記事「時代が求める公益資本主義」には、こういうデータが紹介されています。

「世界最大の小売りである米ウォルマートの売上高はスペインの収入よりも大きい。トヨタ自動車の売上高はインドの収入よりも大きい。サムスンの売上高はトルコよりも大きい。世界の大会社を国家と仮定すると、世界上位100ヵ国のうち70を企業が占める」

グーグルも当然この世界上位100ヵ国の上位に位置するでしょう。
より大きな収益を求める大企業とすれば、米国防総省の軍事プロジェクトは非常に大きな収益源となり得る。
企業倫理としての「Don't be evil」を守るか、それともより大きな利潤を求めるか。
単純な選択でないことは明らかです。

同記事では、こういうデータも出しています。

「世界で最も金持ちの8人と世界人口72億人の下から36億人が持っている資産は一緒だという極端な貧富の差が出ている。上位1%と残りの99%が持っている富も同等だ」

このような金持ちの個人であれ、国家予算を凌駕する大企業であれ、彼らがその気になれば、いくつかの国を恣意的にコントロールすることさえ不可能ではないでしょう。
そういう個人や企業の利潤追求意思が「パックスアメリカーナ」に紛れ込めば、どうなるのか。

原丈人さんによれば、英米型の資本主義は「株主資本主義」、別名「カジノ資本主義」だという。
つまり、一人の勝者がすべてを取る「総取り資本主義」。
それで金融危機の度に中産階級が没落し、スーパーリッチ層がますます豊かになる。
あまりに極端な貧富の差は、この資本主義によって生まれたわけです。

中産階級が没落すると、どうなるか。
貧困層が増える。
明日生きるか死ぬかという貧困層にとって、5年、10年先の話はどうでもいい。
必然的にポピュリズムが進み、民主主義は健全に機能しなくなる。
1%の富裕層の意図だけが政治に反映されるようになる。

今回グーグルが「メイブン計画」から離脱したとしても、ライバル企業(例えば、アマゾンやマイクロソフト)がすぐにその穴を埋める。
さらに、グーグルは「メイブン計画」から離脱する一方で、別の軍事計画「JEDI(ジェダイ)」への参加を狙っている。

「パックスアメリカーナ」を善と評したとしても、その裏では小国を凌駕するグローバル企業が「戦争ビジネス」でさらに成長し、民主主義は弱体化する。
一面的には論じられない複雑な問題です。

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