三谷幸喜、恐るべし
気に入った映画があると、時々DVDを借りてきて、息子が私に勧めてくれることがある。
最近見せてくれたのが、
「十二人の怒れる男
原作は米国の脚本家、レジナルド・ローズ。
この原作をもとに、テレビドラマが1954年に、そのリメイク版映画が1957年に作製されています。
私にすれば、原作を読んだことも映画を観たこともないが、名前は知っている。
映画は古く、モノクロであるのに、そんな珍しいものを息子がどうやって見つけてきたのか分からない。
それでも、
「これ、いいよ」
と息子が言うので、一緒に見ると、確かになかなか面白い。
場面設定は、父親殺しの罪に問われた黒人少年の裁判で、12人の陪審員が一室で議論し続けるというもの。
11人が有罪と言う中で、1人だけが無罪を主張し、話し合いで決を採るたびに無罪が1人ずつ増え、ついには全員が論破されて無罪判決に至るのです。
その後しばらくして、一夜教会で映画の上映会をするので、何か一つ良いものを探してほしいと頼まれ、ネットで人気の高い映画を探すことがありました。
絞りに絞って、最後に残った候補が2つ。
一つは、福山雅治主演の「そして父になる」。
もう一つが、三谷幸喜脚本による「12人の優しい日本人」。
上映会の前に2つとも自宅で観た結果、みんなで観るには「そして父になる」が良いと判断したが、もう一方も非常に面白い。
そして当然ながら、三谷の作品は、あの半世紀以上も昔の名画「12人の怒れる男」の、良く言えばオマージュとして、普通に言えばパロディとして作られたものです。
先に、「怒れる男」を観ていますから、あのよく練られた議論の筋書きをどんなふうに「優しい日本人」に作り変えているのか、その期待をもって観る。
基本の設定は似ています。
日本にも陪審員制度があったらという設定で、12人が集められる。
違うのは、最初の決では全員が「無罪」。
しかし1人の男だけが、
「話し合いがしたいんです」
と言って、有罪を主張し始める。
日本人は概して議論が苦手。
そこに「優しさ」も現れるが、論理による説得はなかなか功を奏さず、決を採るたびに無罪が増えたり有罪が増えたりする。
そして後半に入って、それまで沈黙を守っていた一人の男性が、「私は弁護士」と名乗って、にわかに無罪を主張し始めるところから、筋の流れにうねりが出てくる。
そして、結局最後は全員「無罪」に行き着く。
そのさらに後に、落ちがある。
弁護士と名乗った男性が、全員「無罪」の決が出た後で、
「実は僕、弁護士じゃない。俳優志望なんです」
と、そっと打ち明けるのです。
私は最初に「怒れる男」を観てから「優しい日本人」を観た。
ところで、若い息子はどうしてあんな古い映画を見つけてきたのだろうと思っていたら、後日、息子が、
『三谷幸喜 創作を語る
を持ってきた。
それを読んで、やっと合点がいったのです。
息子はまずこの本を読んだ。
それで「優しい日本人」を知り、その元に「怒れる男」のあることを知った。
それで「怒れる男」のDVDを探して借りて観てみると、これも面白いので、私に勧めてくれた。
そういう流れです。
「怒れる男」も面白いが、「優しい日本人」も単なるパロディを越えた面白さがある。
元のにはない独自の展開と落ちがあり、最後にはいかにも日本人らしい優しいラストシーンが流れる。
三谷幸喜、恐るべし。

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