幸福はお金で買える
経済学の世界では、
「宝くじは愚か者に課せられた税金」
と定義する人もいるのです。
(『宝くじで1億円当たった人の末路
毎年の年末には「年末ジャンボ」などといって、万が一にも当たれば10億円と喧伝するので、多くの人が一攫千金の夢を描いて宝くじ売り場に列をなす。
ところが、宝くじほど割に合わない賭け事はないのです。
1枚買って10億円が当たる確率は1000万分の1以下で、99.999...%の人は、生涯買い続けても1等を射止めることはできない。
おまけに、控除率(宝くじの購入代金に占めるテラ銭の比率)は約50%と、競馬競輪の25%と比べても約2倍の高さ。
召し上げられたテラ銭(この場合の胴元は国や保険会社)は、販売経費を差し引かれたのち、地方自治体に分配される。
それで、冒頭のような定義が出てくるのです。
いやいや、それでも万が一当たれば、一発逆転、バラ色の人生が開けるのではないか。
鈴木さんの結論は、そうではない。
「外れれば、お金と時間の無駄で、ろくでもない。万が一当たれば、様々なトラブルに巻き込まれて、これもまたろくでもない。そういう末路ならば、そもそも宝くじは『買わない』という選択が最も正しい」
末路の極端な一例は、2005年にサマージャンボの1等2億円に当選した女性が、交際相手の男性に殺害されるという事件があった。
そこまでいかずとも、親族トラブル、貧困化、やる気の喪失など、文字通り「末路」というにふさわしい事態が待ち受けているようです。
こういう末路を避けるには、どんな対策を打てばいいか。
鈴木さんが取材した専門家によれば、まず親族トラブルを回避するために、税理士、弁護士に相談する。
次に、複数の金融機関に相談して資金プランを立て、急に豪華な生活に変えないこと。
もちろん、仕事を辞めてはいけないし、人との付き合い方も変えてはいけない。
一言でいえば、それまでの生活を変えてはいけない。
バラ色の夢も何もなく、味気ないことこの上ないですが、そういうことです。
「お金は恐ろしい」
とも言えますが、問題はお金の使い方でしょう。
使い方を間違えると、お金は極めて恐ろしいものになる。
お金の使い方について、米国ハーバード大学のマイケル・ノートン博士が、こんな研究結果を発表しています。
「お金によって幸福度を上げる方法は、自分以外のことにお金を使うこと」
TEDのプレゼンの中でノートン博士も、宝くじに当たった人の末路を紹介しています。
友人たちが彼のお金を求めて群がるようになり、人間関係は破綻。
おまけに、散財をした結果、宝くじが当たる前よりも借金が増え、生活も破綻。
しかしそれでも、彼の末路を読んだ人々のコメントは、
「お金は必ずしも人を幸福にしないことが分かった」
というものではなく、
「もし自分が彼と同じ宝くじに当たったら、こんなふうに使う」
といった、自分のバラ色の夢がほとんどだった。
しかも、その夢のほとんどは、自分のために使う道。
それが間違いの始まりだと、ノートン博士は言うのです。
どんな些細な金額であれ、どんな些細な使い方であれ、誰か他の人のためにお金を使った後には、幸福感が訪れる。
一方、5ドルであれ20ドルであれ、金額にかかわらず、それを自分のために使った場合は、幸福感に変化がない。
世界中の各地でさまざまな民族、様々な生活レベルの人たちを対象に実験した結果が、それだと言うのです。
それで博士は、
「幸福はお金で買える」
と言う。
いかにもビジネススクールの教授らしい表現ではありますが、考えてみるべきテーマです。

にほんブログ村
- 関連記事
-
-
「鉄仮面」を脱ぐ 2020/10/11
-
「禁」よりも「断」 2021/06/10
-
政府だけが場当たり的か 2020/07/21
-
HPVワクチンと純潔 2011/09/21
-
スポンサーサイト