心臓に穴のある赤ちゃんは、いらない?
『「いい質問」が人を動かす
の中に、こんな実話が紹介されていました。
★★★
初めての子どもが生まれたばかり。
母親になった喜びに浸っている女性に、主治医が告げます。
「お子さんの心臓に穴があります」
母親は一瞬にして奈落に落とされた気持ちになり、夜になると、一人、こっそりと新生児室に行ってみる。
「あの子を育てていけるだろうか? 命は助かるだろうか?」
不安で目の前が真っ暗になり、涙が流れて止まらない。
その時、一人の看護師さんが通りかかる。
彼女は泣き崩れる母親を別室に通し、心の内をすべて聞いてあげました。
そして、優しい口調で一言、こう質問したのです。
「心臓に穴のある赤ちゃんは、いらない?」
★★★
この質問のところまで読んで、私の眼はこの一言に釘付けになったのです。
「どうして、こんな質問が出てきたんだろう?」
5分考えては読み直し、10分考えては読み直してみる。
「この質問、私には出てくるだろうか?」
出てこないような気がする。
おそらく、質問ではなく、励ましの言葉を探すような気がする。
「大丈夫ですよ。赤ちゃんの命は助かります。お母さんがしっかりしないと、赤ちゃんが困りますよ」
とか。
医療の専門家である看護師さんが言えば、励ましにはなるかも知れない。
しかし、絶望の淵にいるお母さんに、どれほどの希望になるだろうか。
うつろに響くような気がする。
しかし、この看護師は最初に励まさず、質問をしたのです。
その質問は、お母さんを一瞬にして、重要な気づきへ立ち返らせたのです。
「心臓に穴があろうがなかろうが、この子は私が授かったかけがえのない子どもだ」
母親としての「感情」が彼女の心を満たしました。
彼女は迷うことなく、即座に、
「いいえ」
と答える。
その後に、看護師は母親を励ますのです。
「そうでしょ。大丈夫。心配なら、いつでも病院に来て」
この本の著者、谷原さんは、「いい質問」について、こう考えます。
いい質問は、まず、相手の「感情」を動かす。
感情が動いた後で、「理性」を納得させる。
そういう質問は、確かに「人を動かす」。
看護師の対応は、まさにその理論そのものです。
しかし、そういう質問が、あのような切羽詰まったところで適切に出るか。
これがとても難しいと、私は感じるのです。

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