なるほど、「天下り」
政治問題には疎いので、深入りはしない。
『大手新聞・テレビが報道できない「官僚の真実」』(高橋洋一著)を読んで、
「なるほど!」
と思ったことを、一つだけ書きます。
高橋洋一氏は、昨今かなり発信力の強い経済評論家であり、元・財務官寮でもあるので、官僚組織の内部事情に精通している。
本書を読んでみて、官僚の世界でなぜあれほどに「天下り」が問題になるのかについて、官僚組織の仕組みが分かり、「なるほど、そういう訳か」と納得がいったのです。
国家公務員一般職およそ30万人のうち、いわゆる「キャリア」と呼ばれるエリート集団は約15,000人。
中央省庁全体では、毎年数百人程度をキャリアとして採用しています。
彼らは海外留学や地方勤務などを経験して、同期入省のほぼ全員が本省の課長クラスまでは、大体横並びで昇進する。
それがおよそ40歳前後。
しかしその後から、昇進に差が出てくるのです。
例えば財務省の場合。
課長以降は、局長、財務官、そして最高峰の事務次官というポストしかない。
局長には6人がなれるが、財務官、事務次官は1人ずつ。
とすれば、局長になれなかったキャリアはどうするのか。
ほかの省庁や地方支分部局、地方公共団体、外郭団体などに出向する者もいるが、結局は、ほとんどが省を退官する。
つまり、出世レースから脱落したのち、省内にとどまるキャリアはほとんどいない。
事務次官になったキャリアの同期は、全員が退官していることになるのです。
出世頭が局長に上がるのは、大体50代の前半。
したがって、その年齢の頃から脱落組は定年を待たずに退官し始めます。
「ほんとかいな?」
と思うような仕組み。
しかしこれは、官僚組織を事務次官を頂点とするピラミッド状態に維持するための人事システムだと言えるのです。
そして、このような慣行的システムが必然的に「天下り」をもたらすことになる。
「なるほど!」
と納得したのが、ここです。
なにしろ40代、50代で半強制的に退官させるのですから、省庁も退官後の生活を保障する必要がある。
また、官僚としても、出身省庁に忠誠を尽くすのは、出世競争から脱落しても、天下りによる給与が保証されているからでもあるのです。
それにしても、高級官僚の天下り。
出身省庁という「天」から、大学や各種法人、あるいは民間企業などの「地」へ「下りる」という表現であり、意識もそうでしょう。
役人には「公僕」という呼び方もあるが、「許認可権限」を持つ公僕の力は極めて大きい。
公僕という名の「天」の人になっている。
「なるほど」と納得はするが、是認できるものではない。

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