大村は言い出したら聞かん

昨年、画期的な治療薬「イベルメクチン」の開発によってノーベル医学生理学賞を受賞した大村智博士。
サンデー世界日報のインタビュー記事を読むと、
「人生哲学を持った学者だな」
という印象を受けます。
自宅にかなり大掛かりな庭園を造っておられます。
自ら設計したと言います。
眺める位置によっていろいろな見え方をする庭造り。
座敷から眺めると、落ち着いた日本庭園に見える。
下のほうから上ってくると、山を登る雰囲気になる。
庭の中に小さい石臼が積んである。
専門の庭師が見ると、
「面白い庭だなあ」
と思う。
庭全体のバランスをとるのに、その石臼が必要だったのだと言います。
こういう感覚は、専門の科学と無縁ではありません。
絵描きの雪舟が庭を造ったように、科学者も庭を造る。
部分と全体の調和を複合的に見る目は、芸術にも科学にも必要なのです。
研究を続ける中で岐路に立つことがある。
そういう時は「一番むつかしいと思う方向」を選ぶ。
「たいていの人は楽な道を選びやすいが、そちらへ行くとろくなことはない。難しいほうに行くから、いろいろな開拓もできるし、人ができないこともできる」
その精神で、ほかの研究者が見つけられなかった細菌を見つけてきたのです。
「大村は幸運だ、という人がいるが、本当に運がいいとはどういうことか分かっていない。運は呼び込むものがあるからやって来るんだ。ただで運が転がり込んでくるのではない」
岐路に立って難しい道を選んだとき、
「絶対に成功させる」
という決意で徹底的に取り組む。
頭がおかしいんじゃないかと言われてもやる。
そうすると、
「大村は言い出したら聞かん。やり出したら絶対やるぞ」
ということになり、
「じゃあ、応援しよう」
という人が出てくる。
それでうまくいくというのです。
大村博士の精神の根幹は、おばあちゃんの教育にあるようです。
小さい頃から、
「人のためになることをするのが一番大事なこと」
という教えを聞かされ続けた。
どんなことをやればいいかは何も教えてくれなかったが、おばあちゃんの精神が骨身にしみ込んだようです。
ノーベル賞受賞の立役者は、第一にこのおばあちゃん。
二番目が、家庭をすべて切り盛りして研究生活を支えた奥様。
2人の女性の陰の力があったのだと言えます。

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