異性婚と同性婚、どこで決着がつくのか
UPF(天宙平和連合)-JAPANが出している月刊冊子「平和大使」10月号に、
「同性婚合法化の波に日本はどう対応すべきか」
という記事が載っています。
米紙「ワシントン・タイムズ」記者、シェリル・ウェツスタイン女史の講演を要約したものです。(講演の原題は「米国における同性婚:その経緯と展望」です)
女史は、米国連邦最高裁判所が同性婚を合憲と認める判決を下したことによって、
「いつ果てるとも知れない大規模な文化戦争に突入してしまった」
という現状認識を示しています。
同性婚の合法化は第一義的に法律の問題、社会制度の問題のように思えます。
それをなぜ「文化戦争」というかというと、これが広く深く、宗教的信条や伝統、倫理道徳などのレベルで国民の生活全体を巻き込もうとしているからなのです。
しかし、これは文化というレベルの問題でもなく、何かさらにもっと深い根源的な問題のように思えてなりません。
ウェツスタイン女史の論旨を簡単に辿ってみましょう。
★★★
米国は元来、信仰の篤い国でした。
結婚は神からの祝福と見なされ、生涯持続すべきものと考えられていたのです。
一方、1950年代から80年代まで、同性愛の活動家は婚姻というものにさしたる関心を持ってはいませんでした。
彼らの専らの関心は、すなわち自分の人生を自分が望むように生きる自由を得ることだったのです。
そういう彼らにとって、婚姻はむしろ「性的抑圧」であり、「父権制度」による束縛そのものだったのだと言えます。
60年代に起こった「性革命」によって、婚前・婚外交渉まで容認するような、性に対する寛容な文化が広がり、婚外出産や同棲が若い世代にとって一般的なものになりました。
さらに70年代に入ると、
「過失なき離婚」
が認められ、夫婦は社会的圧力や偏見の抵抗なしに、結婚生活にピリオドのサインをすることができるようになりました。
これらの流れは、同性愛者たちにとって好ましいものだったと思われます。
ところがその一方で、変わらないものが婚姻による優遇措置だったのです。
結婚が認められたカップルは、国家から所有権や保険、税金、相続その他で法律上の優遇措置を変わらず受け続けていたのです。
それが同性愛者たちの目には、魅力的に映った。
これが女史の論旨のキーポイントと思えます。
一方で性的な自由を求め、他方で制度的な優遇措置を求める。
この両方が同時に掴めれば、これほど有り難いことはありません。
活動家たちは広報・マスコミキャンペーンを展開し、同性愛者の家族が異性愛者の家族同様、愛情豊かなものだとアピールしました。
また、同性婚は公民権の問題であるとも主張しました。
このような粘り強い活動努力の結果、現在、大半の米国人、中でも若い世代は同性婚の合法化を容認しており、それを嫌うのは年配者とファンダメンタルな信仰者だけという構図になりつつあるのです。
★★★
異性婚と同性婚の混在。
これをウェツスタイン女史は「文化戦争」と表現した上で、この戦いの結末は15年以上先につくだろうと結論しています。
同性愛者の親に育てられた子どもたちが、これから成長して成人する。
大人になった彼らが自らの人生体験を自らの言葉で語るようになる。
その時、同性婚が「有益か否か」について、決定的な答えが示されるだろう、と。
しかし、
「本当にそれで決着が着くだろうか?」
と訝ります。
仮に子どもたちが、
「同性婚の親はやっぱり嫌だ」
という答えを出したとしても、それでその親たちは、
「やっぱり同性婚はだめだ。もうやめよう」
と考えるでしょうか。
そもそも、結婚が「有益か否か」とはどういうことでしょうか。
結婚の決着は、「有益か否か」ででも、「子どもたちの答え」ででもつくものではない。
結婚の決着は、その結婚が「どれほど幸せであったか」でつけるしかない。
そんな気がします。
現実的な話ではありませんが、例えば、異性婚でも同性婚でも国家による優遇措置を一切打ち切ってみる。
あるいは、異性婚は優遇措置から除外し、同性婚を一方的に優遇してみる。
それでも人は、結婚をするのか。
結婚するなら、それでも人は、異性婚を選ぶか。
もしかして、そんな差別があるなら同性婚がよほどいいと、同性婚者が増えるか。
もしも本当に異性婚の本質が神の祝福であるのなら、その結婚が必ず同性婚より幸福でなければならないでしょう。
それは優遇措置の問題ではない。
子どもたちの意見でもない。
夫婦が実感する「幸福感」。
これこそが本物が生き残る道でしょう。
よろしければ1クリック!!

にほんブログ村
【おすすめ記事】
- 関連記事
-
-
セリグマン教授の原体験 2018/09/19
-
2011年を越えられなかった極東の独裁者 2011/12/19
-
マルクス主義を後押しするもの 2021/11/28
-
災難をのがるる妙法 2010/05/29
-
スポンサーサイト