遠くは見ない、明日だけを見る
「遠くは見ない。明日だけを見る」
昨日のNHK番組「プロフェッショナル」に登場した歌舞伎役者、坂東玉三郎が自分の生き方をこう表現しました。
当代の歌舞伎界で、出色の女形。
芝居の日々、劇場と自宅の往復しかしない。
家に着くとすぐ、専属のトレーナーの入念なマッサージを受け、そのまま休む。
翌日の発声を崩さないために、無用な電話は一切しない。
徹しています。
明日の芝居のことだけを考えているのです。
インタビュアーはお笑い芸人の岡村隆史。
「遠い10年先の目標を定めて、それに向かっていったとしても、それが達成できなくなったら、すごいストレスですよね。それよりも、明日を見つめる。そのほうが自然と導かれるんじゃないかなと思う」
そういう玉三郎に対して、岡村が、
「僕はこれまでいつも、遠い先ばっかり見てやってきたんですよ」
と言うと、玉三郎はすかさず、
「それは、不安なんじゃないですか」
と指摘します。
しかし実は、玉三郎こそ不安な人生だったのです。
小さい頃は虚弱体質で、普通の人生を生きていけるかさえ分からなかった。
女形になろうとすると、背丈が高過ぎると言われた。
ところが、身体能力がずば抜けていたのです。
演技における体の動きが余人を寄せ付けない魅力を発揮しました。
するとその名声と人気は高まり、活動は国内ばかりか、外国にまで進出。
海外の演劇好きの絶賛を浴びるようになったのです。
10年先を見つめる勇気は持てなかったのかも知れません。
次の日だけを見て、演技を磨いてきたのです。
「振り返ってみて、人生、楽しかったですか? 幸せですか?」
という岡村の質問に対しては、
「幸運だったと思います。人から見ればとても幸運に見えるでしょうね。ということは、幸せだったんだと思います。オタクみたいで、人生どうなるかわからないような子どもだった人間が、『人生、幸せでしたか?』と言われて、『私の人生は ... 』と言えるようになったというだけでも、夢のような人生でしたね」
そう語る時の玉三郎の表情も所作も、「役者」の美しさを放っているのに圧倒されました。
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