命はもつと粗末に扱へ
命は一つしかない。だから大切にせよと誰も言う。親も教師も、テレビに出てくる見識者とかいう輩も、果てはミュージシャンまでもが言う。命は大切にせよとな。
ヒヒヒヒ。だからダメなのだ。命はもっと粗末に扱うべきなのだ。命というやつは丁寧に扱いすぎると、淀み、腐る。最近の輩はみんな己を大事にしすぎて、結果、チャンスを掴むこともなく、ずるずると腐っていく。
(「カイジ」)
「カイジ」
といふのは、アニメです。
数年前、息子が高校生の時にハマり、息子につられて私も一通り見ました。最近また見直してみたのです。
主人公のカイジが地獄を抜け出していく、といふストーリー。地獄とは、借金地獄です。どうやつて抜け出していくかといふと、ギャンブルに勝つことによつてです。
カイジは、普通に言ふ「負け組」に属する平凡な若者。一方、ギャンブルを仕掛けるのは「勝ち組」の高利貸し。負け組をさらに借金漬けにして、一生借金の返済に縛りつけようといふ悪魔的な魂胆です。
ところが。
平凡な男に見えたカイジが、ギャンブルが始まるやいなや、恐ろしい力、知略を発揮し始めます。相手の心理を読み抜き、ここぞという時には大冒険をする。負けて当然といふ流れの中で、勝ち抜いていくのです。
最後には大金をかけて、自分の耳、果ては指4本まで賭ける。その時、高利貸しのドン、兵藤がつぶやくセリフが冒頭の言葉です。
「命はもつと粗末に扱ふべきなのだ」
昨今、人の命はむしろあまりに軽く扱はれてゐるやうにも思はれます。
国内では、殺害された死体はゴミのように山林に遺棄される。
中東から逃れた難民は、ゴムボートが難破して海中に沈む。
さうではあつても、兵藤のドスの利いた言葉、一見、常識の真逆に思へる言葉には、一瞬息を呑みます。
たとへ数百万の借金であつても、もし返せないのなら命を差し出してでも返すのが債務者の「誠意」だと迫る、非情なる「債権者」。
「本気で地獄を抜け出したいのなら、お前の罪、先祖の罪まで、一銭も残さずに、命に代へても返すのが、罪人の誠意だらうが!」
と悪魔に迫られたら、カイジのやうに耳でも指でも賭けられるだらうか。
ちよつと背筋が寒くなるやうな凄みを持つたアニメです。
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