伊達の名前を汚すな
伊達みきおさん。
コントのコンビ「サンドイッチマン」のツッコミ役というのでしょうか。
昨夜、NHKの「Family History」を見ると、仙台で500年以上前から続く、由緒ある家柄です。
有名な正宗の代に分家し、一旦は大條(おおえだ)姓を名乗ったが、後にまた元の伊達姓に戻ったといういきさつがあるようです。
みきおさん本人も知らなかったのは、曽祖父、祖父の2代にわたって東大法学部卒だったこと。
特に曽祖父は裁判官。
エリートの家系ですね。
祖父も同じように裁判官を目指したものの、試験に失敗し、満州で就職したものの兵役にとられ、終戦とともにシベリヤに抑留されました。
祖父夫婦はかなり辛酸を嘗めました。
代々、男の子には正宗の「宗」か「亮」の文字を名前に冠するのがしきたりでしたが、父は伊達の名があまりに大きすぎるために、息子には敢えて「宗」も「亮」も使わなかったとのこと。
そのみきおが、堅気の仕事を辞めて、
「東京に出て芸人になる」
と言った時、父は当然のように大反対しました。
「伊達の名を汚すようなことはするな」
と、きつく止めようとしましたが、みきおは出奔。
東京に出ても、3年間はまったく鳴かず飛ばずでした。
父は「帰って来い」と、何度も呼びました。
ところが、転機が訪れました。
あるコンテストで優勝し、人気に火がついたのです。
その名が全国的に知れ渡った頃、地元東北を大震災が襲いました。
「こういう時こそ、お前の名前を故郷の人たちのために使うべきではないか」
と父は言いました。
みきおは相棒とともに何度も東北を訪れ、その才能を人心復興のために投入しました。
どんな簡易設営の舞台であっても、彼らがそこに登場するだけで、笑いが広がり、多くの人の心が沸き立つのです。
番組の最後に、製作者が父親に問いました。
「昔、伊達の名前を使うなと言われたそうですが、今はいかがですか?」
父は満面の笑顔で、
「今は、すっかり許しています。あれくらいになれば、伊達の名前を汚したとは言えんでしょう」
と答えました。
息子が登場したすべての雑誌、すべてのラジオ番組・テレビ番組の記録をスクラップして、始終見返しています。
特にNHKに出た時、父親は大喜びするそうです。
地元では、駅にも食堂にも役所にも、サンドイッチマンのポスターが貼られています。
親戚の一人は、
「ある意味では、みきお君は天下を取ったようなものじゃないですか」
と評しました。
ある意味では、というのは、「ビッグネーム」ということです。
その天下取りは、単なる幸運ではないでしょう。
本人の才能、苦節はもとより、伊達という血の力もあったかも知れません。
名門家の名前を汚したと見做され、故郷を捨てた男が、何年もの苦節を経て、父母と氏族を屈服させる。
「長子権復帰」という、一つの象徴を見るような気がします。
ビッグネームが一時的な人気で終わるのか、それとも曽祖父を超え、正宗に近づけるか。
それは、今後「伊達」の名前をどれほど公的に使うかにかかっているでしょう。
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