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修道院のベル

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半世紀前の代表的な信仰小説家の一人、カルロ・カレットは十数年間宗教的理由からサハラ砂漠で隠者として過ごした。聖餐のパンのみを友とし、食料のためにヤギの乳を搾り、現地のベドウィン語に聖書を翻訳しながら、独りで何時間も祈りを捧げた。
ある時、母を訪ねるためにイタリアに帰国した彼は、あることに気付いてはっとした。それは30年以上も家族の世話に明け暮れ、自分の時間などほとんど持てなかった母の方が、自分より黙想的な生活を送っていたという発見であった。
(ロン・ロルハイザー著『家庭内修道院』)

カレットの砂漠生活は、イエス様時代の修道者、洗礼者ヨハネを思わせます。
砂漠に出て行かないまでも、世俗的な欲望を捨てて修道院で一生を送った修道士は数え切れないでしょう。
しかし実は、修道士たちが思いもよらなかったところ、すなわち、世俗的だと看做して捨ててきた「家庭生活」の中に、極めて次元の高い修道生活があったというわけです。

修道院における信仰の中心テーマは、いったい何でしょうか?
自分の命も、自分の体も、自分の時間さえも、自分のものではなく、主のものである
ということ学び、かつ実践することである、と言えるでしょう。

そのことを示す象徴的なものがあります。
修道院のベル
というものです。
これを最初に考え出したのは、修道院制度の開拓者の一人である聖ベルナールです。

彼はそれを定めるにあたって、修道士たちにこう言いました。
ベルが鳴ったら、何をしていたとしてもそれをすぐに中断し、ベルが召喚する特定の活動(祈り、食事、労働、学習、睡眠など)にすぐさま向かわなければいけない

例えば、手紙を書いている時に祈りの時間を告げるベルが鳴ったら、すぐさま手紙を中断して、祈祷室に向かわなければなりません。
そして、手紙はその祈りが終わってから再開するのです。

聖ベルナールの意図は、こういうことです。
ベルが鳴ったら、すぐその指示に従うのは、それをしたいからではなく、その務めの時間が来たからです。
そもそも時間というものは自分のものではなく、神様のものです。
修道院のベルには、時間は神様のものであり、自分は時間に従うことによって神様に従うということを常に自覚させるという目的があるのです。

ところが、よく考えてみると、カレットが図らずも悟ったように、修道院のベルはごく普通の家庭にもあったのです。
特に子育てをしている母親には、修道院のベルよりももっと厳しいベルがある。
言うまでもなく、子どもがそれです。

子育て中の母親には、何年間も自分の時間も持てず、自分の欲求はいつも二の次にせざるを得ません。
振り向けばいつでも誰かの手が差し出され、何かを要求されています。
母親の耳には修道院のベルが一日に何度も鳴り響き、そのたびに何事も途中で放りだして対応しなければならないのです。
それは自分がそうしたいからではなく、単にそれをする時間になったからなのです。

修道士たちは頭を下げて、至高なる神様に従おうとしますが、母親は自分が生んだ子どもに対して、僕のように従う生活をします。
ある意味で、修道士たちよりももっと厳しい修行と言えるかも知れません。

私がこのブログを書いていると、娘がやって来て、
「この公式の意味が分からないから教えて」
と割り込んできます。

それをやっと終えて、続きを書き始めると、今度は息子がやって来て、
「背中が痒いから、掻いて」
とせがんできます。

その時は、ブログのことは一切忘れて、子どもの願いに集中します。

これは、私にとっての修道院のベルです。

今年80になるおばあちゃんは、毎朝6時に起きて洗濯をし、息子の弁当を作ります。
これも、それをしたいからではなく、それをすべき時間が来たからするのです。

これも、おばあちゃんにとっての、修道院のベルだと言えます。

わざわざ砂漠に出かけて、十数年も修道生活をせずとも、日常の家庭生活こそ宗教的で霊的な訓練の場であると悟れば、そこがすぐさま立派な修道院になります。

まさに、

家庭内修道院
です。


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ドラミちゃん

み言カレンダーに「時間はすべてを与え すべてを奪う。時間を支配すれば 人生を支配できる」とあります。時間の重要さを感じます。私の体にとって重要なのは、休息・睡眠です。これが少なくて済むのならば、もっとたくさんのことができるのに、と思いながら休んでいます。これも修道院のベルといってもよろしいでしょうか?必要以上の休息は堕落といえるでしょう。

2010年03月02日 (Tue) 22:34
kitasendo
Admin:kitasendo