愛用品5原則
数年前に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』を読んで以来、著者の武田邦彦氏は、私が注目する論客の1人となっています。
元来は生真面目な科学者のようですが、歯に衣着せぬ物言いや、素人にも分かりやすい話し方など、大衆受けするキャラクターの持ち主なので、テレビなどへの出演もよく目にします。
エコロジー的な取り組みや、地球温暖化阻止などは、今や世間の常識です。
これに対して、武田氏は一騎当千の勢いで真っ向から異を唱えています。
ところが、好感を持てるキャラクターが衆目を引きつけ、人々の関心を集めているようです。
環境問題は、①科学的側面、②経済的側面、③政治的側面など、多面的で複雑な問題が絡むので、簡単には扱えません。
私が武田氏に興味をもつ理由の一つは、それら複雑な問題の根底に、「心のあり方」をしっかりと持っていると感じられるところです。
例えば、上の著書でも、結局、大量消費意識を変換しない限り循環型社会の実現は幻想に過ぎないというのが最後の結論です。
そして、大量消費から逃れるにはどうしたらいいかという問いに対して、2つの答えを出しています。
① 自分の関心がものから心へと変わること
② 身の回りのものが「愛用品」に変わること
①の答えはよく目にするものですが、具体的にどうするかとなるとなかなか難しい。
私が面白いと思うのは、第2の答えです。
武田氏によると、「愛用品」とは次の五原則を持ったものです。
① 持っているものの数がもともと少ないこと
② 長く使えること
③ 手を焼かせること
④ 故障しても悪戦苦闘すれば自分で修理できること
⑤ 磨くと光ること、または磨きがいがあること
これらは明らかに大量生産品、大量消費の概念の対極にあるものです。
こういう要件を満たすものが、今の私たちの身の回りにどれほどあるでしょうか。
いまさら愛用品生活をすることも、我々には決して容易なことではないように思えます。
ただ、ものを使い捨ての対象と見る習慣を脱して、ものの中に潜む心を感じ取る習慣を取り戻すことはきわめて貴重なものだと思います。
この転換は、実に個人的でささやかなことのようにも見えます。
しかしこれは、ただ単なる環境問題に留まらず、ものが溢れて決して減りそうにはないこの時代に、私たちが本当の幸福感を見定めるのに役立つ効果的な方法の一つにはなりそうな気がします。
「ものにも心がある」
「ものと良い関係を作って、豊かに生きるにはどうしたらいいか」
などについては、下記の「お勧め記事」を参考にしてください。
【お勧め記事】
「私、綺麗でしょう」
「カラスとの約束」
「トマトの心に学ぶ」
「神のもとの大家族」

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