清兵衛の再婚
何年も前の話です。
妻が42歳で昇華(他界)し、その2年後に父が76歳で昇華しました。
それで、家族は私と2人の子ども、母の4人となったのです。
妻が昇華したとき、息子は小学2年、娘は5歳でした。
いつもは息子が私と寝るために、娘はおばあちゃんを気遣って、2階でおばあちゃんと寝るのが通常となっていました。
その娘が、久しぶりに下で私と一緒に寝ると言います。
そういう時は、必ず寝つく前に何か話をしてくれとせがみます。
私は映画「たそがれ清衛兵」が好きで何度も見ていたので、そのストーリーを話してやると、息子も娘も興味深そうに聞き入っていました。
2人の幼い娘を残して妻が若くして逝き、年老いた母親と4人で暮らす清衛兵の境遇は、私たちのそれによく似ていますから、子どもたちは自分の立場と比べて考えながら聞いたのでしょう。
映画の中では、ラストシーンで末娘(もう老年になっていますが)が父親の墓参りをしながら、
「人は父のことを『運のなかった男だ』と言いますが、私はそうは思いません」
と独白します。
清衛兵は初めの妻を労咳で亡くした後、幼馴染の女性と再婚し、3年間ほど幸せな暮らしをしたものの、戊辰戦争に駆り出されて落命したのです。
「お父さんは再婚しないの?」
と娘が聞くので、
「清衛兵さんは再婚したが、お父さんは再婚しないよ」
と答えると、娘は
「どうして?」
と重ねて聞きます。
「お父さんには、お母さんだけが永遠の妻だからね」
と答えました。
すると娘は何を思ったか、机の上に置いてある妻の写真を取りに行き、枕元に置いて、しばらくじっと見つめていました。
そしてそのまま、何も言わずに、気がついてみると、いつの間にか寝息を立てていました。
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