負ける強さ
後出しジャンケンで、一つの実験をします。
相手が何かを出した1秒後に自分が出すというルールのもとで、自分が勝つ手を出す場合。
5回やると、5連勝できる確率が90%以上。
今度は逆に、1秒後に自分が負ける手を出すようにします。
するとおかしなことに、5回やって5連敗できる確率が50%くらいに低下するようです。
私がやってみると、つい勝つ手を出してしまいます。
勝つのも負けるのも、1秒間で行う情報処理の量は同じだと思われるのに、勝つよりも負けるほうが難しいというのは、一体どういう事でしょうか。
ただ、この実験を何回か繰り返すと、負ける手を出せる確率もあがるようです。
これはつまり、私たちの脳は、通常の状態では「勝つ」ことを追求するようにセットされているということです。
企業の世界では、よく、
「勝ち組、負け組」
という表現を使います。
そして、当然のように、誰でも、
「負け組にならず、勝ち組にならなければ」
と考えます。
スポーツの世界では、「勝つ」ことが練習の大前提です。
大相撲で、
「勝ちたい」
という意欲がなくなれば、引退時期を迎えます。
勝つ人は強者、負ける人は弱者。
誰もが強者になりたい、弱者は惨めだ、と考えます。
入試で敗者になれば、不合格で涙を飲み、惨めな気持ちになるでしょう。
ところが、ある実験によると、
「絶対に勝たなければ」
という意識で物事に取り組むときは、脳波がβ波状態になり、緊張感が強くなります。
逆に、
「負けてもいいや。勝たなくてもいい。いっそ負けてしまおう」
と思うと、脳波がα波からθ波になって、とてもリラックスする。
β波状態では、脳の15%しか能力が出ません。
それに対して、α波、θ波状態では、85%の脳が活性化するというのです。
「負けてもいい」
というのは、時と場合によるかも知れません。
しかし、
「勝つのが善、負けるのは悪」
という発想を180度変えてみるのは、有効な場合もあるのではないかという気がします。
例えば、親子の関係。
親が、
「私がきちんと子どもを躾けて、育てなければ。私が正しいことを知っているので、子どもにはそれに従わせなければ」
と思って接すると、それは、
「親が勝って、子どもが負ける」
ということになるでしょう。
「親が絶対に勝たなければ」
と思い込むと、脳波がβ波になって、緊張し、それが子どもにも伝わって、親子関係が難しくなる可能性があります。
ここは、
「親は負けてもいい。子どもに勝たせて、子どもが自主的に伸びるのを助けよう」
と思うくらいが良いのではないかと思います。
親子関係以外でも、
「負けることによって、勝つ」
という方法が有効な場合は、いろいろあるような気がします。
それについては、また折にふれて考えてみたいと思います。
よろしければ1クリック!

にほんブログ村
- 関連記事
-
-
堕落性から確実に抜け出していく復活 2016/06/22
-
良心を探し出す道 2011/06/20
-
あなたは今何を考えているのか? 2012/05/24
-
我これを報いん 2022/04/03
-
スポンサーサイト